【d!】さようなら、飛び降ります【軍パロ】

#１４ ページ16

エマside





「……あ、エマ」

「あ、先輩」





隊長から預かった書類を抱えて歩いていると、遠くから先輩が歩いてきた。


訓練終わりなのか首にタオルを掛けていて、髪も濡れており不覚にもドキッとしてしまったのを頭を振って、忘れる。




先輩は私の手元を見て、「トントン様まだ寝てるよ」と言うと横を通り過ぎて行ってしまった。


いや、あの、手伝ってはくれないんですか。





じーっと後姿を見つめていれば、視線を感じたのか先輩はため息をついて戻って来、持っていた書類を半分受け持つと「行くよ」と歩き出してしまう。



ツンデレかよ、先輩。

内心ニヤニヤしながら先を歩く先輩について行くと、話題は隊長の話へと転換した。





「この書類、もしかして隊長から？」

「はい。私がやったとは言わずに渡してくれと」

「…」





一体隊長は何を考えているのだろうか。




トントン様もそうだが、隊長は最近ろくに寝ていない。

目の下の隈がそれを物語っており、部下である私や先輩が「寝てください」と言っても大丈夫だと言ってまた仕事を取り掛かってしまう。



トントン様以上に寝てないし、書類が恋人みたいなところあると思うんだ、隊長。





「隊長、一体何を考えていらっしゃるんでしょうか」

「…なにが？」

「だって…幹部ですよ、我々国の。
それに、隊長は参謀長です、頭のいいあの方が…他の幹部に『無能』と呼ばれてるなど…耐えきれません」

「…まあ、それは俺も痛いほど思ってる。けど…」






俺たちじゃどうにも出来ないから。




悲しげに微笑む先輩に、ぎゅっと心臓が潰された。





「ほら、着いたぞ。俺用事あるから、はい」






ずしっと書類を重ねると、先輩は手を振って行ってしまった。



片手でなんとか持ち直し、書記長室の扉をノックすると、「どうぞ」と優しい声が聞こえる。


失礼します、と言いながら書類を倒さぬように入れば、机とキスをしそうなぐらい顔を近付け、書類に筆を走らせているトントン様が見えた。





置く場所がないほど散らかった机を見て、どこに置こうか考えて突っ立っていれば、気配に気がついたトントン様が顔を向けて「適当に置いといてくれて構へん」と仰る。





「すまんなぁ」

「いえ、大丈夫です」

「…君がやったん？その山」

「……はい、恐縮ながらトントン様のお力になれればと思い…出過ぎた真似をして申し訳ございません」






頭を下げれば、トントン様は私の頭に手を置いた。

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