姿が見えない彼女 Ⅱ【kid】 (ページ13)

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『ん……それでは聞いてください。”ニア”』

「ちょ、なんで私の好きな歌知ってるの」

「Aちゃん、しーっだよ」

そんな2人の会話が聞こえてくる

『♪ねぇニア……』

僕が歌い終わると2人は何故か立ち上がって拍手をしてきた
これが所謂、スタンディングオベーションってやつか

なんならAはすすり泣きしてる

「晴くんもう…沼だよ……ううっ」

「めっちゃ良かった、色んな意味でもう本当にそれは」

なんか照れるな
誰かの為に歌うってこんなに幸せなことなんだ。

「どうしよう叶さん、晴くんがかっこよく見えてきた」

「ん〜？幻覚だよ」

叶さんんんん！！！！！！

『もう！今くらいAの言葉に賛同してもいいじゃないですか！』

「ふふっ、うそうそ。すごく良かったよ、歌ってみたとか出さないの？」

『ん〜……まあ……いずれ？』

「はぁぁお酒も飲めて晴くんのニアも聞けてAはしあわせですほんとにしあわせ」

ほわほわと効果音がつきそうなくらい幸せそうな顔をするA

「よかったね〜Aちゃん。計画したの僕だから感謝してね」

「ん！叶さん！一生ついてく！」

『まって！甲斐田にもついてきて！』

「晴くんもだよ！ありがとう！ライバーになってくれて…」

ああ、なんかこういうの一番嬉しいな

僕も、Aが居てくれてよかった。

「Aちゃんもなんか歌いなよ〜そろそろ時間だし」

そう叶さんが言うと

まるでＣＭのような飲みっぷりで手元の酒を飲み干したA

『相変わらずいい飲みっぷり…』

「っはぁ……っしゃいきますか！EGOISTの……」

先程から沢山EGOISTを歌う彼女
好きなんだろうなぁ

「”Ghost of a smile”」

「♪見てよ空を_」

さっきのおちゃらけた酔っ払いと違って
真剣に歌う彼女。

なんでこんなに切なそうに歌うんだ

歌詞が歌詞だから涙腺にくる

それにしても、彼女がライバー志望だったなんて

確かに他の社員さんたちと雰囲気が違うのは感じてた

こうやって、出逢えたのは彼女の選択。

もしかしたら違う今があったのかもしれない

それでもこうして今目の前に彼女がいる。

ライバーとしての甲斐田晴。

社員としての菊池A。

そんな関係でも僕の恋は実るのだろうか

「甲斐田くん。きっと大丈夫だよ、いい女は早めに手の内に収めておきな」

そう耳元でいう叶さん

僕の心の声見透かしてるのかこの人は……。

『僕、逃げないです。絶対に、離したくない』