徒然譜置場【気象】 (ページ6)

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零時の雨 1126．2 ページ6

少し経ち、一区切り付けるかのようにしんと静まり返った。俺自身、特に何かしているわけでもないので、報告するほどの近況といったものもなく、あちらもひと段落話し終えた感じがあった。そろそろ切ろうか、そう提案しようと思った。

「大野さん」

「ん？」

「今何時だ？」

悪戯好きの子どものような言い方。一度耳からスマートフォンを離し、画面で時間を確認する。零時丁度だった。

「誕生日おめでとう」

再び耳をつけると、独特の抑揚をつけた張りのない声が届いた。彼のにやけた顔が想像ついて、俺も小さく笑ってしまった。

「え？それのため？」

「何がよ」

「それ言うための電話？」

「何言ってんの？やめてくれる？もう切るからね」

素直じゃない所も変わらなくて、また笑いがこぼれてしまう。
そのまま切ると思っていたら「ねえ」と呼ばれたので、はいはいと返事を返した。

「今年もよろしくね」

それは新年に言うんじゃないか？こういう日には言わないのでは？そう思っていると、いつの間にか通話を切られてしまって、あ、と小さな声が出た。

切られた後、画面を操作すると、新規メッセージが三件きていると表示されていた。こそばゆくて、開いてしまうのが惜しい。

外はまだ雨が降っていた。稀に見る激しい雨だが、こんな日も悪くない。俺はもう少しこの時間を味わおうと、また窓の淵に腰を下ろした。