徒然譜置場【気象】 (ページ3)

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熱愛．3 ページ3

ゆったりとした低い声。何十年過ごしても、初めて会った時と変わらず俺の事を“くん”呼びしてくるのはいつまで経っても変わらない。こんな時でも、そんなのが愛しい。

「久しぶりだね松本。なに？」

あまりに渇いた笑い。自分でも呆れる。松本に当たった所で何も解決しない。悪いのは松本じゃない。

「ごめんね翔くん、朝の件、迷惑掛けちゃって」

「ああ、いいよそういうの。全部マネージャーから聞いたから。ファンの子だったんでしょ？」

何を苛立っているのか自分でもわからない。早口で声が少し上擦る。まるで必死に取り繕ってるみたい。呆れる。

「…ねえ翔くん、会いたい」

声が詰まった。すぐに返事ができなかった。

「……悪い無理」

「なんで」

「今仕事から帰ってきたばっかなんだよ。疲れてるしシャワーだってまだ浴びれてないし」

「今更な事言わないでよ。顔見たい」

松本には見透かされているのだろうか。虚勢を張っているのも、何もかも。
このまま突き放してしまえば楽なのに。弱いのは俺の方で。

「下まで来てる。部屋、入れてくれない？」