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結果として私と藤崎くんは図書委員に決まった。
藤崎くんが言った通り、私たち以外に図書委員へ名前を書く人はいなかった。
みんな面倒な事が分かっていたのか、はたまた先に名前を書いた私たちに遠慮をしたのか。分からないけど。
「なんで私の名前書いたの?」
ホームルームが終わり、そそくさと教室から出ていった藤崎くんを呼び止める。
昇降口で靴を履き替えていた彼はその手を止めない。
「なんとなく」
耳を疑った。拍子抜けするほどいい加減な回答。
思わず目を丸くした。
「な、なんとなくって……」
「別にいいじゃん。やりたいの無かったんでしょ」
それは事実。確かに余り物でいいと言ったのは紛れもなく私だ。
でも違う。違う。そういうことが聞きたいんじゃなくて。
上手く言葉に言い表せない。もどかしい。
何も反論できずに口籠る私に目もくれず「じゃあね」と彼は言い去ってしまう。
一人でその場に立ち尽くす私をすれ違う生徒たちは不思議そうな顔で見ていく。
私は、藤崎くんの考えていることが全く分からない。
私に興味なさそうな感じなのに、勝手に名前書いたりして。はっきり言って意味不明な行動だ。
「はあ……」
人生最大とまではいかないが、それぐらい大きなため息が出る。
一年間彼と同じクラス、名簿は前後。それに加えて同じ委員会になってしまった以上嫌でもかなり関わることになる。
嫌、と言うよりかは苦手。とにかく分からないから。
__『蘭たん、悪い子ではないから』
以前秋山さんに言われたことを思い出す。
秋山さんには悪いけど、正直最悪だ。私から見たら理解不能な悪魔のような。
「とりあえず帰ろう」
悶々と考えていても埒があかない。ここはひとまず帰宅することにした。帰りの電車も寝よう。
靴を履き替えて外に出る。
グラウンドでは運動部の生徒がもうすでに活動をしていた。微かに掛け声も聞こえてくる。
ぼんやりとその様子を見やると、無意識に「はあ」とため息が出た。
うちの学校は、一年生は必ず部活動に所属しなければならない。近々先生から見学やら登録やらの説明があることだろう。
「部活、どうしよう」なんて呟いた一人言は、誰にも届くことなく春の夕暮れに消えていった。
どうしよもない不安感が私をただただ襲う。
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ぱるぱる(プロフ) - けみすぅさん» お待たせしました……!ありがとうございます、頑張ります!! (8月12日 15時) (レス) id: 7a8872ac1a (このIDを非表示/違反報告)
けみすぅ(プロフ) - お待ちしておりました…、!!無理ない範囲で更新頑張ってください楽しみにしてます…♡ (8月9日 4時) (レス) @page18 id: 32d0e6279e (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 八分雨_さん» ありがとうございます!!!!エモすぎて泣きました…… (2021年6月12日 20時) (レス) id: c973c4b273 (このIDを非表示/違反報告)
八分雨_(プロフ) - 初コメ失礼します!作品めちゃくちゃに大好きです!…夏終わりませんよね… (2021年6月10日 6時) (レス) id: 1ae85e2dd8 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 散歩雨さん» アッアッアッありがとうございます!!!!そう言っていただけてとても嬉しいです!伸びるように更新頑張ります! (2021年5月28日 21時) (レス) id: be4d8b08b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱるぱる | 作成日時:2021年5月12日 0時