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いつもなら私が教室に一番乗り。電車の都合があるから。
でも今日は違った。
既に人がいる。珍しいとは思ったけれど、それを更に上回る衝撃的事実がそこにはあった。
その人物が、何故か私の机に突っ伏している。
ズボンを履いているから男子。
一瞬まだ自分が寝ぼけているのではないかと思い頬をつねる。……痛い。間違いなく現実だ。
ゆっくりと近づき机の横に立つ。けれども全く私に気づく様子がない。
恐る恐る「あの、」と声をかける。
無反応。
よく見ると両耳にイヤホンを着けていた。
心の中で謝罪の言葉を並べつつ、片方だけそっと外して今度は肩を揺さぶってみる。
「あの、すみません」
静かな朝の教室に私の声がこだまする。
駄目だ、と思った矢先。間を置いて二度目の呼びかけにもぞもぞと身体をよじらせた。
気怠げに頭を起こして私の顔をじっと見つめる。
目と目が合い、思わずドキッとする。
少し癖のある髪に長めのまつ毛。すっと伸びた鼻筋。整った顔立ちはまるで女子。
そして彼はゆっくりと口を開いた。
「だれ」
中性的な顔立ちには似つかわしい、低めの声に、とろんとした目。若干まだ眠たそう。
「こっちの台詞なんだけど」
心の声がぽろっと出てしまい、彼は顔をしかめる。
「……なんだよ」
「そこ、私の席……だから、どいてほしい、です」
リュックの肩紐をきゅっと握りしめ、しどろもどろに言葉を紡ぐ。
すると彼は不思議そうな顔をする。
「ここ、俺の席じゃないの?」
「うん。違う」
彼は「おかしいなぁ」と呟きながら頭を掻く。
「す……知り合いが俺の席は後ろだって言ってたんだよ。机の中空っぽだったし……」
「だったらクラス間違えてるんじゃ?」
「それはない。ちゃんと7組に名前書いてあった」
食い気味にきっぱりと否定する彼。
そこまで言われると、じゃあ後は何があると言うのだろうか。
状況を整理すべく思考を巡らせる。
『だれ』
私とは初対面。
『知り合いが俺の席は後ろだって』
何故か自身の席を知らない。
『机の中空っぽ』
荷物がない机=自分の席だと考える。
『ちゃんと7組に名前が』
私と同じクラス。
……クラスメイトで初対面?
私の中で一つ、嫌な説が頭をよぎる。
もしかして。
「藤崎さん?」
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ぱるぱる(プロフ) - けみすぅさん» お待たせしました……!ありがとうございます、頑張ります!! (8月12日 15時) (レス) id: 7a8872ac1a (このIDを非表示/違反報告)
けみすぅ(プロフ) - お待ちしておりました…、!!無理ない範囲で更新頑張ってください楽しみにしてます…♡ (8月9日 4時) (レス) @page18 id: 32d0e6279e (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 八分雨_さん» ありがとうございます!!!!エモすぎて泣きました…… (2021年6月12日 20時) (レス) id: c973c4b273 (このIDを非表示/違反報告)
八分雨_(プロフ) - 初コメ失礼します!作品めちゃくちゃに大好きです!…夏終わりませんよね… (2021年6月10日 6時) (レス) id: 1ae85e2dd8 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 散歩雨さん» アッアッアッありがとうございます!!!!そう言っていただけてとても嬉しいです!伸びるように更新頑張ります! (2021年5月28日 21時) (レス) id: be4d8b08b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱるぱる | 作成日時:2021年5月12日 0時