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 昼休み。

 体力テストの際に意気投合した中嶋さんと机をくっつけてお弁当を食べていた。今日は私の好きなおかずである、母特製の卵焼きが入っていてちょっと気分が上がる。
 中嶋さんと他愛もないお喋りをしていると、彼女は「そういえばさ」と話を切り出した。



 「穂高さんって何部入るの?」



 あぁ……と返す言葉が見つからず口ごもってしまう。
 因みにこれは担任にも言われていた。仮入部届けを出していないのは私だけらしく、提出を催促されている。
 何となく入りたくなくて、先生には勉強に専念したいと、当たり障りのないそれらしい理由を掲げたが、決まりだからと申し訳なさそうな顔をされた。



 「うーん。いまいちどれもピンと来なくて」
 「そうなんだ。私は中学で陸上部だったんだけどさ、まあ高校でもやろうかなって感じで決めちゃった」
 「確かに体力テストのとき足早かったよね」



 途端に中嶋さんの箸が止まる。何事かと顔を見ると、彼女は目を丸くしていた。
 私は何か変なこと言ってしまったのかと懸念する。



 「穂高さんだって早かったじゃん。なに謙遜してるの」



 驚いた様子でそう言って、言葉を続けた。



 「あれは経験者の走りだよ」



 中嶋さんの曇りのない真っ直ぐな視線が私を射抜く。
 何もかもを見透かされそうで、少し怖くなった。



 「……小学校の時にいっぱい走ってたからかな!それより本当、どうしようかなあ」

 「ならさ。まだ見学期間内だし今日どっか見に行こうよ」



 私はもう決めちゃってるけどさ、と彼女はそう付け加えると再び箸を取る。
 どこからどうみても取り繕った見苦しいことを口にしたというのに。中嶋さんは私の発言には触れず、むしろ心優しく提案をくれたのだ。



 「いいの?」
 「いいに決まってるじゃん」



 さも当然のように彼女は肯定の意を示す。
 かつてこんなにも慈悲のあるクラスメイトがいただろうか。

 私が「ありがとう」と感謝の言葉を伝えると目尻を下げて表情を和ませた。それが嬉しくて仕方がなかった。



 「私の卵焼きあげる」
 「あっ!じゃあ私も唐揚げあげちゃう」
 

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ぱるぱる(プロフ) - けみすぅさん» お待たせしました……!ありがとうございます、頑張ります!! (8月12日 15時) (レス) id: 7a8872ac1a (このIDを非表示/違反報告)
けみすぅ(プロフ) - お待ちしておりました…、!!無理ない範囲で更新頑張ってください楽しみにしてます…♡ (8月9日 4時) (レス) @page18 id: 32d0e6279e (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 八分雨_さん» ありがとうございます!!!!エモすぎて泣きました…… (2021年6月12日 20時) (レス) id: c973c4b273 (このIDを非表示/違反報告)
八分雨_(プロフ) - 初コメ失礼します!作品めちゃくちゃに大好きです!…夏終わりませんよね… (2021年6月10日 6時) (レス) id: 1ae85e2dd8 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 散歩雨さん» アッアッアッありがとうございます!!!!そう言っていただけてとても嬉しいです!伸びるように更新頑張ります! (2021年5月28日 21時) (レス) id: be4d8b08b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱるぱる | 作成日時:2021年5月12日 0時

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