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「穂高ってさ、陸上部だった?」



 体力テストが終わって教室に戻ってきた。後ろの席でペットボトルのお茶を飲んでいた穂高に訊ねる。
 突然話しかけられて驚いたのか思いっきりむせている。

 一呼吸置いて穂高は「なんで?」と質問を質問で返した。



「50メートル走めちゃくちゃ速かったじゃん。あれ7秒ぐらいでしょ」

「み、見てたの」



 素直に「うん」と答えると穂高は何故か嫌そうな顔をする。

 素人目だけどもあの走りは完全に経験者。単に速い人ではない気がする。先程のクラスメイトの会話で興味が湧いた。



「中学は美術部だよ」



 穂高はそう言うとすっと目線を下げて、日焼けで熱った頬へ濡らしたハンカチを当てていた。

 返答は聞いた話の通りだった。腑に落ちないが、本人がそう言うのだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 会話を続けようとした穂高が、何部だったかと俺に聞いてきた。「吹奏楽」と一言返す。俺も俺で気の利く返答ができないものかと。


 吹奏楽部。文化部のくせして練習は想像以上にきついし、楽器のマウスピースは使い回しだし。女子はすぐ揉めるし。男子は俺含めて五人もいないかったから肩身が狭かった。顧問も変な人だった覚えがある。



「まあ高校ではやらない」

「私も。とにかく良い思い出無いなぁ」

「美術部、けっこう楽そうなのに」

「え?」

「え?」



 俺たちの間に変な空気が流れる。

 でも今の会話の流れとしては別におかしなところはなかった筈。決して変なことを言った訳ではないと思うのだが。



「あ、ああ!うん!楽だけどね!私あんまり絵は上手くないから……そういう意味で良い思い出無いっていうか!」



 必死に取り繕うその姿に不審感しかない。



「穂高。なんか、」



 言葉を続けようとした。しかしそれはチャイムの音にかき消されてしまう。同時に教員が入ってきて学級長に号令を促す。



 結局、その日は何も聞けぬまま帰路についた。



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ぱるぱる(プロフ) - けみすぅさん» お待たせしました……!ありがとうございます、頑張ります!! (8月12日 15時) (レス) id: 7a8872ac1a (このIDを非表示/違反報告)
けみすぅ(プロフ) - お待ちしておりました…、!!無理ない範囲で更新頑張ってください楽しみにしてます…♡ (8月9日 4時) (レス) @page18 id: 32d0e6279e (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 八分雨_さん» ありがとうございます!!!!エモすぎて泣きました…… (2021年6月12日 20時) (レス) id: c973c4b273 (このIDを非表示/違反報告)
八分雨_(プロフ) - 初コメ失礼します!作品めちゃくちゃに大好きです!…夏終わりませんよね… (2021年6月10日 6時) (レス) id: 1ae85e2dd8 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 散歩雨さん» アッアッアッありがとうございます!!!!そう言っていただけてとても嬉しいです!伸びるように更新頑張ります! (2021年5月28日 21時) (レス) id: be4d8b08b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱるぱる | 作成日時:2021年5月12日 0時

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