13 ページ14
(side:L)
・
「穂高ってさ、陸上部だった?」
体力テストが終わって教室に戻ってきた。後ろの席でペットボトルのお茶を飲んでいた穂高に訊ねる。
突然話しかけられて驚いたのか思いっきりむせている。
一呼吸置いて穂高は「なんで?」と質問を質問で返した。
「50メートル走めちゃくちゃ速かったじゃん。あれ7秒ぐらいでしょ」
「み、見てたの」
素直に「うん」と答えると穂高は何故か嫌そうな顔をする。
素人目だけどもあの走りは完全に経験者。単に速い人ではない気がする。先程のクラスメイトの会話で興味が湧いた。
「中学は美術部だよ」
穂高はそう言うとすっと目線を下げて、日焼けで熱った頬へ濡らしたハンカチを当てていた。
返答は聞いた話の通りだった。腑に落ちないが、本人がそう言うのだ。それ以上でもそれ以下でもない。
会話を続けようとした穂高が、何部だったかと俺に聞いてきた。「吹奏楽」と一言返す。俺も俺で気の利く返答ができないものかと。
吹奏楽部。文化部のくせして練習は想像以上にきついし、楽器のマウスピースは使い回しだし。女子はすぐ揉めるし。男子は俺含めて五人もいないかったから肩身が狭かった。顧問も変な人だった覚えがある。
「まあ高校ではやらない」
「私も。とにかく良い思い出無いなぁ」
「美術部、けっこう楽そうなのに」
「え?」
「え?」
俺たちの間に変な空気が流れる。
でも今の会話の流れとしては別におかしなところはなかった筈。決して変なことを言った訳ではないと思うのだが。
「あ、ああ!うん!楽だけどね!私あんまり絵は上手くないから……そういう意味で良い思い出無いっていうか!」
必死に取り繕うその姿に不審感しかない。
「穂高。なんか、」
言葉を続けようとした。しかしそれはチャイムの音にかき消されてしまう。同時に教員が入ってきて学級長に号令を促す。
結局、その日は何も聞けぬまま帰路についた。
・
111人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱるぱる(プロフ) - けみすぅさん» お待たせしました……!ありがとうございます、頑張ります!! (8月12日 15時) (レス) id: 7a8872ac1a (このIDを非表示/違反報告)
けみすぅ(プロフ) - お待ちしておりました…、!!無理ない範囲で更新頑張ってください楽しみにしてます…♡ (8月9日 4時) (レス) @page18 id: 32d0e6279e (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 八分雨_さん» ありがとうございます!!!!エモすぎて泣きました…… (2021年6月12日 20時) (レス) id: c973c4b273 (このIDを非表示/違反報告)
八分雨_(プロフ) - 初コメ失礼します!作品めちゃくちゃに大好きです!…夏終わりませんよね… (2021年6月10日 6時) (レス) id: 1ae85e2dd8 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 散歩雨さん» アッアッアッありがとうございます!!!!そう言っていただけてとても嬉しいです!伸びるように更新頑張ります! (2021年5月28日 21時) (レス) id: be4d8b08b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぱるぱる | 作成日時:2021年5月12日 0時