【npl】春一番

1 ページ1

・





　姿見の前に立って、自分を眺める。


紺色のジャケットに胸元には学年色の赤を彷彿とさせる深紅のネクタイ。そして極めつけにチェックのスカート。

身体を少し動かして色んな角度から見てみる。

　中学はよくあるセーラー服だったからか、ブレザー姿はどことなく大人っぽく感じる。



「うん。やっぱり可愛いな、南堀(みなみほり)の制服」



　南堀高等学校。私が今日から通う学校だ。
若干自然の多い田舎のような場所にあるけれど、校舎は比較的綺麗だったし制服も公立の割にはそこそこ可愛い方である。



　ただ一つ、難点といえば。





　「A〜！！！早くご飯食べないと！！！電車間に合わないよ！！！」





　一階からお母さんの大きな声が聞こえた。



　そう。電車通学なのだ。



　家から最寄り駅まで徒歩5分弱。電車で40分。終点の駅で降りて、再び徒歩で10分ほど。片道約1時間かけて通わなければならない。


　……だって学校が隣の市にあるから。


　地元の高校は何となく行きたくなくて、選んだのがこの南堀。

　案の定中学の同級生は誰もいない。ここを受験したのも、合格して進学するのも私一人だけだ。



　そんなことを思っている間にも時間は過ぎていく。


　さすがにこれはちょっとマズイかも。




　私は急いで入学祝いで買って貰ったパスケースと真新しいリュックを持って部屋を出た。





　急ぎすぎて足を滑らせ、階段ですっ転んだのは言うまでもない。



・

2→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す