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そらるside
「…ックソっクソっ失敗した!…早く、早くやらないと!」
冷雨が慌て始めた。
俺は気に介さず、今日で何度目かの能力行使をした。
キーン、という音が聞こえ、世界がセピア色に染まっていく。
「あ……ぅぐっ…!」
見渡す限りセピア色に染まったと思った瞬間、脳を突き刺すような痛みに襲われた。
明らかに、安全に使える使用量を超えているのだ。
俺の能力は、世界中の時を止める。
そうした場合の脳の負担がとんでもないのだ。
ふと感触を感じて、鼻の下を指でなぞると、血が付いた。
吐き気も襲ってきて、正直即座に辞めたいけど、俺にはすることがある。
まずベルトから銃を取りだし、それを全弾冷雨に撃ち込んだ。
弾は冷雨に触る直前で減速し、セピア色に染まる。
続いて爆弾を出してピンを抜き、爆発する前に冷雨に向かって何個も投げる。
これも俺の手から離れて浮かび上がった瞬間にセピア色に染まった。
鼻からの出血を感じながら、俺は眠るAさんに駆け寄って、その白磁のような頬に触れた。
するとAさんの体に色が戻る。
「……ん…」
Aさんは柳眉を僅かにしかめ、まつ毛を震わせて目をゆっくり開けた。
「Aさん、現状説明は後でしてあげるから、今は俺の言うこと聞いて?」
「え、あ、はい。」
きょとん、としながら頷くAさんは、俺の鼻から流れ続ける血に驚いた。
男が美少女の頬を触りながら鼻血出してる画って結構やばくねえか。
「冷雨に爆弾を仕掛けたから、俺が能力を外した瞬間に、みんなを守るようにシールドを張ってくれる?」
「了解です。」
「じゃあ行くよ。3、2、1…今!」
止めた時を動かす。
セピア色に色が付き、機械仕掛けのようにみんなが動き出す。
「レッドメノウ!!」
Aさんの声と共に俺の眼前、そしてみんなを守るように薄赤色の紋様が浮かんだ。
透けて見える向こう側では大爆発が起こる。
爆発の余波と火の手がこちらまで来るが、Aさんのシールドが反射してくれる。
頼む、これで終わってくれ…と祈りながら見ていると、爆煙が風に流されて溶けていく。
そこには凄惨な姿のナニカが居た。
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