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吐いた。
うずくまった。
吐いた。
絶望した。
…何度繰り返しただろうか。
もはや胃液も枯れ果てた気すらする。
どこまでも続いてる暗闇は怖くて寂しくて。
「…かほ…空…ふゆ…おかあさん……」
足下に広がる闇を爪で引っ掻いた。
物体の無い物なので、何も出来ないが。
あれからどれほどの時間が流れただろう。
数十秒のことかもしれないし、数時間、数日、数ヶ月、数年経ったのかもしれない。
もしかしたら、外にいるかほ達はもう死んでるかもしれない。
私は相変わらず闇の中にいた。
自分の体さえぼんやりとしか見えない闇の中、ずっと探している。
私の話の主人公は誰か。
ずっとそれだけを考えている。
私じゃない。あの3人でもない。母親でもない。
なら一体誰だというのか。
小学校の頃私をいじめてた悪ガキ?見て見ぬふりをしていたご近所さん?あの暴力しか知らない父親?優しい義両親?元気な友達?厳格な先生?
石川 Aと片桐 Aの記憶を総合しても答えは見つからない。
「誰…知らないよもう…何なの……」
髪を掻き毟る。
知らないよ。なんだってこんな所に閉じ込められてるの。
ふと頭の中にとある映像が浮かんだ。
舗装されていない、剥き出しになった土の道。
道行く人々はみんな古めかしい着物を着ている。
映像が写り変わっていく。
戦があったり、平凡な日々があったり、外来のお洒落なドレスがあったり、第二次世界大戦が起きていたり、大地震があったり…
どれもこれも知らない情報ばかり。
「…なに、これ」
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