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……まだだ。
まだ私は死ねない。このままじゃ終われない。
｢…シーブルーカルセドニー！！｣
文字通り血を吐くようにしてそう叫び、めいっぱいの幸運を自分にかける。
左耳が血切れ飛んだ。
能力の代償。
聴覚の片方を失い、激痛が脳に届いた。
しかしすぐに両腕の痛みと肋骨の痛みがそれを上回る。
私は迫り来る壁への衝撃に備えて体を強ばらせた。
すると、柔らかい感触に体を包まれる。
暖かい癒しの手が体の中に滑り込んで来て、私の負傷している所に優しく触れて行った。
痛みが遠ざかり、意識がはっきりしてくる。
｢…ふ、ゆ……｣
｢うん。｣
｢…遅いわ、ばか｣
｢うん、ごめん。｣
｢…ありがとう。｣
｢……うん。｣
翠色の目をしていたふゆは、即座に碧に戻して立ち上がった。
＿＿彼女の石、ラピスラズリは天空の石と呼ばれるそうだ。
或いは夜空の石とも呼ばれるそれは、石に金粉が入っているかららしい。
ふゆの、透明感のある青い目の中に散りばめられた金粉が光っている。
瞳の中に夜空を見た。
その時私の瞳が喝采を上げた。
分かるのだ。ふゆが何かを見つけ、使い方を知った事が。
彼女は、自分が何をすべきか分かった。迷いが消えた。
立ち上がり、スタスタと冷雨の所に進んでいくふゆの後ろ姿に手を伸ばした。
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