121…続けてそらるside ページ3
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「そんなの…出来るわけない。死んだ人は生き返らない。
これまでのどの医者も、能力者も成し遂げられなかった事よ。」
こめかみを抑えながら唸るように呟くAさん。頭が痛いのだろうか。
冷亜「みんなの記憶から彼らの実態を作りあげて、彼等の持ち物とみんなの記憶から意思の残留を寄せ集めれば話せないことも無いよ。
勿論、実態は無いし実態に生き返ることは無いけど。」
と言って冷亜は、奏汰が愛用していた、オレが誕生日にあげた黒のヘッドフォンに、千秋がいつも嵌めていた銀色の華奢な、青と緑の宝石がついた指輪を何処からか取り出した。
懐かしいそのヘッドフォンに目を細める。
奏汰の寮部屋を探しても見つからない理由が分かった。あいつが持っていたんだ。
うらた「じゃあ…じゃあ今すぐやってくれ!俺は…俺は、奏汰に、千秋さんに謝らないと行けない…っ」
翠の瞳を揺らしながら、冷亜に言い募るうらた。
冷雨「おい、冷亜。いい加減にしろ。」
れいら「冷亜、どうしたの?」
冷亜「ちょっと二人共黙っていてくれるかな?」
冷亜がクイッと指を曲げると、れいらと冷雨の体が持ち上がった。
ころん「何やってんだ?あいつ。」
冷雨「冷亜!お前、何をしてる!」
冷亜「俺はね。姉さん、冷雨。半分だけど、自分で外には出られないけど、人間なんだ。
少しくらい、遊んだっていいだろう?
あの4人は、俺とどこか似通ってて面白いんだよ。
このお遊びに口を出さないなら下ろしてあげる。」
4人、という事は、石川 Aさん達の事だろうか。
Aさんはその端麗な顔を歪めて、頭を抱えながら蹲る。
空「Aっ!!なに、どうしたの?どうして?大丈夫?」
慌てて駆け寄るのは空さん。
キャンプファイヤーの後から彼女はどこか一皮むけた感じがする。
「痛い…ごめんなさい……ここは…どこ…白い、白いお家……こ、じいん?…あぁっ!!」
小さな子供の様に、不安そうに呟いていたが、何かに気付いたようにAさんは顔を上げた。
「いや…だって。でもどうして…やだ。やだ。なんで?なんで?違う。違うっ!
だって私は、私にはお母さんもお父さんもいるのよ。
じゃあこれはなに?分からない!あれは私。でも違う!違う違う違う!!
私は!生まれた時から石川 Aなのっ!違う違う違う違う違う!
じゃあ何が本当?何が本物?どれが当たり?分からない分からない分からない!」
いつもの冷静なAさんからはとても想像できないほど取り乱した様子に思わず固まる。
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