109 ページ35
ふゆside
ぼんやりと、揺れる炎を眺めながら語る空の話は、私にとってはどうにも信じ難い話だった。
私は空が理不尽に人を責めるのを見た事が無いし、空の涙なんて一粒も知らなかった。
でも空は泣いていた。
オレンジ色に光る涙の粒が溢れて止まない。
泣いてるのに気付いた空は歯を食いしばって涙を止めようとする。だが止まらない。
それはまるで、もう楽になりたい。誰かに許されたいと願う空の心と自分を許せない空の心が攻めあっているように感じた。
空の本当のお父さんは空に能力を託して亡くなったのだろう。
こんな時、私は何を言ったらいいのだろうか。
残念だったね?違う、それは最低すぎる。天国のお父さんとお母さんとお姉さんは空に楽になってもらいたいって思ってるはずだよ?…お前が何を知っているというのだ。
なら、私が言えるのはただ1つ。
うぬぼれでなければ、この3人の中で一番仲がいい私だけが分かったであろう事
ふゆ「空、空はもう演じなくていいんだよ。」
その言葉に空はハッとしたような顔をして、Aとかほは首を傾げてる
ふゆ「笑わなくても良いの。辛い時に1人で抱え込まなくても良いの。
空はもう、自由になっても良いんだよ。我慢しないで。」
.
空「…もう笑わなくても良いの?」
その声は、まるで迷子で独りぼっちの小さな小さな女の子のような声をしていた。
ふゆ「そうだよ。」
空「でも私、自分が何なのか分かんないの。からっぽ人間なんだよ?」
ふゆ「そしたら詰め込めば良いじゃん。」
からっぽならなんでも詰め込める。
甘くて楽しい飴、苦くて辛い飴、酸っぱい悔しい飴。
甘い飴だけじゃなくて良いのだ。
ずっと甘かったら疲れるじゃんか。
空「…ありがとう、ふゆ。ありがとう、みんな。」
かほ「………じゃ、焼きマシュマロ食べよっか。今配ってるみたいだし。」
「かーほー?今それ言う?」
かほ「えーだって」
空「良いよ良いよ。気にしないで。食べ行こっか!」
制服のスカートについた土をパタパタと落としながら笑顔で言う空。
その笑顔は、今までの人工の照明のようではなく、本当の太陽みたいだった。
35人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はの - めちゃくちゃ面白いです!更新頑張ってくだせぇ! (2019年3月13日 21時) (レス) id: c35c259743 (このIDを非表示/違反報告)
白鼬(プロフ) - そこの駄作者さん» ほんっとうにすみません…! (2019年2月21日 23時) (レス) id: 41bccf14f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ