交換条件 ページ19
ノコギリクワガタはおおもり山ですぐに捕まる。
カンチとの博物館での妖怪探しの一件で
仲良くなったうんがい鏡の力を借りながら素早く移動もすませ
普通にかかる時間より圧倒的に早く正天寺に戻って来られた。
「ちょっと待ってね」
正天寺でノコギリクワガタを待ち遠しくしていた
りゅーくんに、虫かごに入れたままのそれを手渡す。
すると、子供らしく非常に嬉しそうに喜んでくれた。
「わーい、ノコギリクワガタなのだ！おうちでは
ペット禁止だったのだ。前からずっと欲しかったのだ」
「喜んでもらえたようですね」
おうちってどこの家のことだ、と密かに疑問に思いつつ
ウィスパーに向けて一つ頷いたケータ。
「約束なのだ。友達になってあげるのだ」
「えっ、友達になってくれるの？」
「そうなのだ、なってあげるのだ。だからこれからも色々ちょうだいなのだ」
「……うん、また今度ね」
自分が出来る範囲での事なら聞くよ、と意味を込めて返す。
ただ水晶玉を見せてくれと頼んだだけだった筈だが、
まさか友達になろうと言ってくれるとは。
「仲良きことは美しきかな……
友達が増える瞬間は、いつ見ても感動的なものです」
妖怪メダルを受け取ったケータを見ながら、
しみじみと感じ入るように言うウィスパー。
一方で、まさか二人がそれを聞き逃してしまっていた
だなんて、事実はヒメしか知らない。
「さあ、早速ですが水晶玉を見せてもらいましょう」
「うぅーん…………」
目を閉ざして集中し始めたりゅーくんの頭上の水晶玉が
徐々に妖気に満ちていき、そこをケータ達が覗き込む。
水晶玉には確かに何かの景色が映り出されており、
よく目を凝らした二人が“あっ”と声を上げた。
「これって、この間の……？」
「キュウビに出会った場所ではありませんか」
「……そこに、とっても悪い奴が居るのだ。妖怪のはみだし者なのだ」
以前に、おキツネ様の怒りのために起きたと噂されていた
ボヤ騒ぎを調べようと、入り口付近まで近づいたあの廃病院だ。
あの時は中まで入ることはしなかったが、
いよいよ入る事になるというわけか。
「むむむ……良からぬ妖怪ですか。これは匂いますね……
事件の匂いが。ともかくかげむら医院に行ってみましょう！」
「……待つのだ」
「…………どうした？」
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作者名：花の巫女 | 作成日時：2018年8月25日 13時
