プロローグ ページ2
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新学期の春──小学五年生を迎えた天野景太こと通称“ケータ“は
今日もいつも通りに、さくら第一小学校へ通って来た。
校舎へは既に多くの生徒が入って行っており
ケータも同じように教室へと向かおうとしたが
視界の端に見慣れた姿を見つけては、その者の元へと駆け寄った。
「おはよう、フミちゃん！……何してるの？」
「あ、ケータ君……おはよう。今、お祈りをしていたの」
桜の木の前で両手を組んで居た少女は、木霊文花こと通称“フミ“ちゃん。
問いかけに答えたフミに、更に一体何のお祈りだろうかと聞くと
彼女は小さく笑みを浮かべたまま再び答えてくれた。
「今から丁度十年くらい前にね、
凄い季節外れの時期に桜が咲いたんだって」
十年前というと、自分達が生まれて一年頃の事か。
そんな時の事など、彼らが自ら知る由もない。
恐らく、彼女も両親から聞いた話なのだろう。
「冬もまだ終わらない頃に、満開の桜が咲いたんですって。
その年の冬は、この町はどうしてか大混乱に陥っていたの」
「大混乱って？」
「よくわからないけど……とにかく、
大勢の人に色々変な事が起こったんだって」
一体どんな話だ、それは──？
そう言わんばかりに首を傾げたケータの様子には
フミも困ったように笑いながら肩を竦めさせた。
「でもそれが、季節外れに満開に咲いた桜をきっかけに
どんどん町中の人達の様子が元通りになっていったのよ」
「ええっ、桜が咲いただけなのに人が元通りになるの？」
「結局、それもよくわからなかったから……十年前のその現象を
この町の人たちは“桜の奇跡“って呼んだらしいの」
桜の奇跡、と呼ばれる現象はその名の通り大混乱に陥っていた
桜ニュータウンに奇跡を起こしたのだ。
今ではその現象による幸福が再び生まれるようにと
春の季節が近づくと、桜に祈りを捧げる者も少なくはない。
「だから私もこうやってお祈りすれば、桜が護ってくれるかなって思って」
「へぇ〜……(そういえば、お父さんやお母さんもたまに桜に
お祈りしてた事があったような気がするなあ……)」
あれは、今のフミと同じ意味をもってしていた事だったのか。
そう思い至りながら、ケータは
既に満開に咲いてしまって居る桜を見上げていた。
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花の巫女(プロフ) - 寝高麗☆とらじろーさん» コメントありがとうございます！ケータといつも一緒にいるのがジバニャンなので、有りです。 (2018年8月12日 17時) (
レス) id: a6d70f2405 (このIDを非表示/違反報告)
寝高麗☆とらじろー - フミちゃんの妖怪、コマさんはどうですか？ ←パートナー説があるので。 (2018年8月12日 15時) (携帯から) (レス) id: e5ef8f5494 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花の巫女 | 作成日時：2018年7月30日 21時
