ねぇ、先生。 (ページ1)

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たったの一言、

たった一言で、
私の目に映る景色は一変した。

一度目は、あの時

病院の先生に、神妙な顔で病名が宣告された時。

もって2年半、3年は生きられないだろう、って。
その時の家族の顔がどうも忘れられなくて私の息が詰まった。

いつも明るく笑っていた母親の顔が悲しそうに歪んで、ぶっきらぼうだった兄が珍しく泣きそうな顔をしていた。

対して私は、なんの感情も抱かずに

ただ笑った。

前みたいに能天気に笑って
「大丈夫だよ、そんな思い詰めなくても」
と言った。

少しでも安心させたくて、笑って欲しくて
だから無理にでも笑った。

のに、家族の顔は笑う訳でも無く
悔しそうに歪められたのは
今でも目を瞑れば思い出される。

全ての選択を間違えたから、私はきっと
こんな状況になったんだと思う。

あの時ああしていれば、もっとこうしていれば
未来は何か変わったのかな。

あの時も＿＿＿＿＿＿

私がもっと違う行動をすれば、未来は違ったのかもしれない。

彼の涙を拭って、彼の小さな背中を包み込み
一人になった彼の姿を必死で追いかけていれば

彼はきっと、今でも＿＿＿＿