149時間目 ページ49
「…話を戻すぞ」
咳払いをして、そう言った。
…毎回思うが、人の話を聞く態度は素晴らしいな。
「僕は物心ついたときには兄さんと一緒にいた。だから、最初自分が王族の人間とは思わなかった。…僕は市民の信頼を失わないために、
僕の言葉に息を呑む音が聞こえた。
「だけど、悪魔の子として生まれた僕を、王族は再び王宮に向かい入れた。市民にバレぬよう隠密に、ね」
僕は言葉を続ける。
「そこで知ったんだ。…自分が王族の血が流れる人間だと言うことを。そして、自分が国の為に王宮へ連れ戻された事を知った」
「どういうこと…？」
僕の言葉に疑問を浮かべたひなたがそう言った。
「国にいたら困る。ならば、無駄遣いせずに有効活用しようって話さ。他の国の人間の元へ嫁がせる気だったらしい」
「そんな…、道具みたいな扱い…！」
メグが僕の言葉にそう言った。
「地位を持った人間は皆そう言う者ばかりだ。自分が偉いと思い込んでいる。…考えることも汚いんだよ」
それは僕が暗殺業や情報業でよく見てきたものだ。
…もし、あの国で生きていたとして、暗殺者としての道に進まなかったのなら。
僕もあんな人間になっていたのだろうか。
偶にそう考えてしまう。
「でも、僕は嫁がれる事はなかった。＿＿＿兄さんが助けに来てくれたから」
＿＿＿あの夜。
毎日、自分の真実を知ってバルコニーで涙を流していたあの夜。
空から舞い降りるようにバルコニーの手すりに降り立ったのは兄さんだった。
『迎えに来たよ』
そう言って兄さんは僕に手を差し伸べた。
僕は迷わずその手を取ったんだ。
「…あの時の兄さん、三日月をバックに現れたからとても幻想的で…。綺麗だった」
「て、照れますね〜」
兄さんは少しピンク色になっていて、僕の言葉に照れていた。
「兄さんが自分の存在を知る人間だったから連れ去ったのも知ってる。本当ならあの場で殺せば良かったのに、兄さんは僕を殺さなかった」
そうだ。
「ねえ兄さん。…教えて？どうして僕を殺さなかったの？」
僕は兄さんにそう問いかける。
同情で殺さなかった、なんて事はあの時の兄さんにはないだろう。
「＿＿＿いつか、教えてあげます」
ほら、やっぱりすぐに教えてくれない。
いつもそう言っているけど、いつ教えてくれるの？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 171人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「暗殺教室」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恵野(プロフ) - 柊りあさん» いえいえ！むしろありがとうございます泣 更新は現在時間が取れず出来ないのですが、今週の土日には時間ができるかもしれないので、その日を予定してます！ (2020年1月14日 21時) (
レス) id: d3fd993259 (このIDを非表示/違反報告)
柊りあ(プロフ) - 更新頑張ってください！一からまた読み返したんですけど、やっぱり面白い……!!応援しています！(何回もコメントするの、しつこいですかね？) (2020年1月14日 20時) (レス) id: 18aaf501b2 (このIDを非表示/違反報告)
恵野(プロフ) - 柊りあさん» コメントありがとうございます。更新出来ない期間が長かったので、書いた内容を覚えておらず曖昧な所もありますが…汗 これからも見てくれると嬉しいです！ (2020年1月4日 14時) (レス) id: 6bb0d67502 (このIDを非表示/違反報告)
柊りあ(プロフ) - この作品、面白くて好きです。これからも頑張ってください！ (2020年1月4日 14時) (レス) id: 18aaf501b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：恵野 | 作成日時：2019年10月24日 17時
