33時間目 ページ33
一学期が終わる。
それは学生にとって嬉しい『夏休み』が始まる合図。
その前に、修業式というものがあるらしい。
なので、今は本校舎に向かっている途中だ。
だが･･･。
「あのさぁ･･･、今日一日ずっと思っていたんだけど」
「なーに？A」
「さっきから近いんだけど」
そう。赤羽がさっきからくっついて来るのだ。
教室に入った途端＿＿
『あ、Aおはよう』
笑顔で挨拶され。
『ねえねえ、何か話そうよ〜？』
『話すことはない』
僕に時間を与えさせない。
僕はここに居る時間でさえ惜しいのに！！
「あ、喉渇いた。ここに自販機はあるかい？」
「あるよ。体育館入り口近くにひとつ」
ほら、とカルマが指を指した方向には、自動販売機の姿が。
「ありがとう。僕、飲み物買うから、先に行ってていいよ」
「いや、俺も煮オレ買いたいから、一緒に行くよ」
におれ･･･？
何それ。『に』って何？表記はどうなってるの？
頭の中をはてなで一杯になっている僕を置いて、先に金銭を自販機に投入する赤羽。
ボタンを押して、買ったものを手に取る赤羽。
「これが煮オレシリーズのひとつの、イチゴ煮オレ」
「･･･それ美味いのか？」
煮って･･･まさか、イチゴを煮るのか･･･？
美味しそうに煮オレを飲む赤羽を横目に、僕はお茶を買う。
「小さい方を買ったんだ」
「ああ。ここで飲んですぐ捨てるつもりだったからね」
二人して自販機の近くで水分を補給する。
と、こちらに向かって歩いてくる人影が。
「･･･浅野君じゃん」
「･･･赤羽か。そこのお前、見たことのない顔だな。貴様がE組の転入生か」
彼が理事長殿の息子、『浅野 学秀』か。
腕に生徒会長の証が付けてあるみたいなので、生徒会長なんだろう。
「初めまして、生徒会長さん。私はAA。E組には最近転入したばかりなんです」
関わる必要のない人の前では、礼儀正しい物腰の柔らかい女子を演じる。
隣で赤羽が驚いた視線を僕に向けている気配がするが、気にしない。
「AA･･･！お前が、総合一位か･･･！」
「はい。恐縮ですが、総合一位をいただくことが出来ました」
早く何処かに行ってくれないかな･･･。
確か、E組って先に並んでいないと行けないんでしょ？
本当、面倒なことを考えるよね、理事長殿？
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作者名：恵野 | 作成日時：2019年6月7日 21時
