正体発覚 ページ17
数分後、戻ってきた彼の腕には土器が抱えられていた。
近づくにつれて独特の刺激臭が鼻をかすめた。うっ、少しきつい、かも。でも持ってきてもらったのに流石にそれは失礼だよな。早く鼻を慣らそう。
『それは…？』
「Aが話した特徴に合うから持ってきたんだ。もし違ったらすまないけどAが話していたのは膠のことじゃないかい？」
鼻をつまみたくなるのを我慢して、恐る恐る司さんの持っている土器の中を覗いてみると、嗅覚は記憶に残りやすいというのは本当のようで一気に強く感じる臭いと比例する様に私の記憶とそのどろっとした物体は合致していった。
『これ！これです！絶対これ！』
「うん。なら良かった。生活でも使うから全部は無理だけど半分くらいならあげられると思う」
足りないかな？と聞く司さんに必死で首を振る。十分だ。貰えるだけありがたいのに量まで欲張るつもりなんて毛頭ない。
「何か入れられる土器はないかい？」
『あ、ですよねすみません！すぐ持ってきます！！』
喜びで少しテンションがおかしいまま私はいそいで部屋の中から小さめの土器を持ってきた。
トロトロと注がれていく膠から目が離せない。恋する乙女顔負けの熱い視線を膠に送る。
…膠にここまで興奮するJKって、とは思う。けど、しょうがない。
本当は膠は長時間茹でてトロトロにするので、私はそのつもりでいたのだが、渡された膠は既に加工してあり、そんな手間がなくなった。
いやっっほおい！！
周りに人がいなければ今にも転がりまわって全身で喜びを表現しているだろう。流石に人の前じゃしないけど。
さて、膠はゲットした。あとは、膠と灰を混ぜて捏ねたら完成だ。これは簡単な作業ですぐに終わった。目の乾燥中の黒い塊を見て頬が緩んでいくのがわかる。ああ、今の顔絶対人に見せたくないな。
あとはもう待つだけ。
すっと周りを見渡して、当たるを確認して。うん、みんな作業に集中してそうだ。今ならバタバタしても、気づかれない。
いそいそと部屋の中に入り、勢いよく地面に倒れ込んだ。
『よっしゃあああ！』
文字通り、部屋中をばたばたと心置きなく転がり回る！ああ気持ちいい！やっぱり溢れる感情を抑えるなんて所業わたしには無理だったみたいだ。
旧世界でも一見大人しそうな見た目との差を感じられたくなかった私はよく一人で感情を爆発させたものだ。
のちに、外の人たちに暴れていたことがバレていたと言うことを知るのはまた別の話。
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作者名：ハント | 作成日時：2023年3月16日 8時
