材料集め開始 ページ15
あやふやな記憶を辿り、必要な材料を思い浮かべていく。
えっと、灰とか炭みたいなものがいるんだよね。この記憶があったから炭を運んでいる人に声をかけれたわけだ。我ながら凄い。
なら炭はもう持っているから良し。他は油がいたよね。これは覚えてるなぁ。植物性のだっけ。他には草。
あとは何かネチョっとしたもの…
うーん、思い出せそうに無いな。諦めよう。
とりあえず今は覚えている分だけでも材料を集めよう。油ならこの集落でも使っていたはず。集落中探せば貰えるかもしれない。
油がありそうなところに向かうことにしよう。
目星が全くついておらず中々不安な探索ではあるものの、動かないよりはいいだろう。
_そして歩き回ること体感約40分。
そろそろ疲れ始めた時にその時はやってきた。
華奢な体に不釣り合いな土器を抱えて歩く女性が目の前を通り過ぎる時に、土器の中の液体がテラッという感じで反射したのを私は見逃さなかった。
急いで引き留め油をもらえないか頼んでみると渋い反応が返ってくる。
油は生活の中でも普通に使っているものなので軽々しくあげられるものではないのかも。
ここで分けて貰えなかったら多分この先一生油をゲットすることは無理だ！という謎の確信があった私はそれはもう必死に頼み込んだ。
そこをなんとか…！と必死に頼み込み、最終的に女性が折れてくれて、半分分けてくれることとなった。旧世界ではごま油を使っていたが菜種油でも良いだろう。
なんべんも分けてくれた女性に礼を言い、分け入れて貰った土器を大切に抱えてルンルンで帰る。
生活に使うものなのに半分も貰えるなんて…！幸先が言い良い。
嬉しさが顔に滲み出て頬が緩んでいるのが自分でも分かる。
でもやっぱり上がる口角を抑えることは不可能で、結局私はニマニマしている変な人になったわけだが、そんなことを凌駕する嬉しさで恥ずかしさも消えていく。
そんな幸せな帰り道の道中、私は見つけてしまった。
(え、もしかしてこれって…)
やっぱりそうだ。
(墨作りに使う、草！)
一気に記憶が蘇ってくる感覚に呑まれる。間違いない。この草を使って墨を作った。草の名前は覚えてないけど、視覚で覚えてる。
この草だ！間違いない！！土器をそばに置いて、むしるように草をとる。
これで、ネチョッとした何か以外は全て揃った。墨が作れる！
土器があるからはしゃげないのがもどかしい。嬉しさと興奮が混ざって、走るようにして部屋に戻った。
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作者名：ハント | 作成日時：2023年3月16日 8時
