絵の具もどきの作り方 ページ12
1人悶々と絵を描くときに必要なものを考えて、何から作るかを決めた結果。
選ばれたのは絵の具だった。
絵の具と言っても、旧世界にあったような絵の具は作れないだろう。
ということで、私が作るのは小さい頃にした色水。
あの時は少量の植物に大量の水、だったけれど、今回は大量の植物に少量の水で作ろうと思う。
流石にあのしゃばしゃばな状態ではまともに描けないだろうしな、と考えた結果がこれ。
そうと決まれば私は近くのちょっとした森から大量の植物を部屋に運び込む、という作業を何往復もした。
ちなみに、その途中杠のところに服を撮りに行ったのだが、これがなんとまあ凄い。
私が頼んだのは一着だったのに、杠が作ってくれたのは三着だった。しかもそれぞれデザインが違うもの。
驚きすぎて声が出なくなったのを覚えている。
私の様子を見て照れたように笑う杠には悪いが、正直私は全く笑えなかった。
目立つはずの太めの糸が気にならないほどの綺麗な縫い目に、この世界でもデザイン性を求め続ける根性…
もういろんなものに圧倒されてしまう。
もちろんいつまでも驚いているわけにもいかないので、作業に戻ったのだけれど。
人生の中でも驚いたことランキングに余裕で入ってくる。
そんな私の腰を抜かしかけた話はさておき、延々と私は猿のように草花を石で潰し続けた。最後の方はほとんど無心でやっていたと思う。
延々とカンカンと打ち続けた。
どれくらい時間が経っただろうか。手と腰が痛くなってきたところでぐっと伸びをする。
目の前にはまあまあの量の絵の具…もとい色付き水が溜まっていた。
そろそろ石で潰すのも疲れたし、水で溶かすだけで出来そうな土の絵の具、と手を伸ばしたところで後ろに人の気配がした。一気に体に緊張が走るのが分かった。
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作者名：ハント | 作成日時：2023年3月16日 8時
