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A side
廉を、怒らせてしまったかもしれない。
なんというか…雰囲気がさっきと違う。
顔は笑ってるけど目が笑ってないのが更にまずい気がする。
けれど今の体制がまた恥ずかしくて身を縮こませた。そんな行動さえも、廉は楽しそうに笑うだけ。
背中とこめかみに冷や汗が伝い、脳内で身の危険を知らせる警報音が鳴り響く。逃げろと騒ぎ立てている。
ここで逃げれたらどんなに楽か。
……逃げれるはずがない、この顔になった廉から。
それにしっかり腰に手が回っている為、この状況から立ち上がって逃げ出すのは困難だろう。
ネクタイも持っていることだし。
『え、えっと…私、』
何かした？と言う言葉を紡ぐ前に唇で口を塞がれた。
後頭部をガッチリ掴まれて、逃げられないようにしてから人の目さえも気にせず何度もキスをする廉。
いつもよりも乱暴なキス。
怒ってる、！？やっぱり怒ってるよね！？
少し強めに肩を押すと唇は離された。その代わりに綺麗廉の顔が至近距離にあり、どこか冷たい視線が刺さる。
その視線は一方的に言い寄ってくる女子生徒によく向ける目で、そういう時は大半とても怒っている時と気に入らない時。今回は多分両方。
あまり向けられたことのない冷ややかな目線に私の言葉は喉奥に詰まった。
とりあえず、怒らせてしまったのは確定らしい。
『れん…っ、んっ…待っ、て…っ、キスするのス、ストップ、！！』
「なんで？A俺とちゅーするの好きやん」
『すっ…！？ち、ちが…！！』
「…満更でもないくせに」
弁解をしようと口を開けたらからかわれるようにキスで塞がれる。
好きじゃないと言いたいのになんだか断言できない自分にも恥ずかしくなって何も出来ずされるがままになった。
楽しそうに、何度も何度も私の頬を撫でてキスを落とす廉くんはいつもの優しい眼差しに戻っている。
けれどきっと、それも今だけ。
このネクタイを渡して結べと言った意味は何となく分かる。
けれどその理由が、あまりにも可愛かったから。
唇を離した廉くんはネクタイを持っていた方の手の甲をゆっくり撫でて私を見上げる。
「紫耀には自分からやるってゆーたのに、俺にはやってくれへんの？」
低い声と共に黒い微笑が廉くんの口元に浮かんだ。
その顔さえ美しく感じてしまうのは、きっと私自身がこの人に溺れているから。
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作者名：KAI | 作成日時：2023年7月10日 13時
