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耳元にあった手が、私の顎へと移動した。
大きな廉の手が私の頬ごと掴まれて半ば無理やり横を向かされる。
『ひゃぁ…っ！』
ちゅ、と音を立てて私の耳にキスを落とした廉。慣れない耳に感じる唇の感触に変な声が漏れた。
人もいっぱいいるのに自分の口から出た声に反射的に赤くなる。
「俺にゆーたら開けてあげたのに、同じとこ開けるんやったらさ。妬けるやん」
今度はむぎゅ、と頬を掴まれて好きなように弄ばれる。
あうあうと間抜けな声を出す私を見て楽しそうに笑い、おでこにキスしてくるところもつくづく小悪魔に感じる。
しかもバレてた、同じ場所に開けてること…！！
「次からは俺に開けさせて、な？」
『ひゃ、ひゃい…』
「ん、いい子」
真っ赤になってうつむく私の頭を撫でて満足したように微笑む廉にもうお手上げ。
可愛いけどかっこよくて、色気を含んだ目線と声で言われては頷くしか出来ない。
でもひとつ分かった。私のことをよく見てくれている。小さなピアスさえ気づいてくれたし、場所のことだって見抜かれた。
頭を撫でた後前髪を触って「前髪もちょっと切ったよな？可愛くなっとる」なんて言ってくれるのも嬉しくて仕方がない。
本当はちょっと失敗したけど、杏菜に修正してもらった。
そういえばまた顔が不機嫌になる、感情が激しい人だ。
杏「女の私にまで嫉妬しないでもらえますかー？ヤンデレ永瀬さーん？？？」
『ヤンデレ…？』
「ちょ、お前俺のAに変なこと吹き込むなや」
杏「お前だよそれは」
鋭い杏菜のツッコミが入るも、私のことをギュッとして離さない廉の腕に埋もれる。
いい匂い、安心する。
それよりもヤンデレってなんだっけ、前マンガで見たような…
『ねぇ廉、ヤンデレってなんだっけ？』
「んー？Aのことがいっぱい好きってこと」
私のほっぺをツンツンしながら廉は優しい笑顔で答えてくれた。
私のこといっぱい好きってことなのか…
そう思うと嬉しくて恥ずかしくて。少しはにかむと廉がまた幸せそうに笑ったので顔を背ける。
あんな顔見たら好き度が上昇する一方だ。
杏「鈍感すぎる…」
海「もう逆にAが哀れに思えてくる」
紫「まぁ本人らは幸せそうなんだしいいんじゃない？」
またくっつき合う私たちの後ろで三人がそんな話をしていたのは気づきもしなかった。
私は廉しか見えてないから。
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作者名：KAI | 作成日時：2023年7月10日 13時
