全て捧げろ (ページ22)

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２２大我ページ22

｢京本くん・・・１２時だよ！起きて・・・｣

彼女の遠慮気味の声が聞こえる。

誰かに起こしてもらうことなんて、ずいぶん久しぶりで心地いい。

「ん～・・・やだあ・・・」

久しぶりに女に甘えるこの感じ。絶対にもうないと思っていたのにこの感じも悪くなくてこっそり楽しんだ。

生憎、これからバイトだからこんなことばかりしていられない。

「A、起こしてくれてありがと！」

口角を上げてぎこちなくだけど、Aにほほ笑みかける。

「よし、支度しよう。バイト行かなきゃ」

「え？もう行くの？ご飯は？」

起きてすぐに支度をして飯は食わないと言ったら、Aは突然部屋を出て行った。そのあと俺に小さいタッパを手渡した。どうやらそれは食べ物らしい。驚いたけど、正直ちょっと嬉しくなった。

「お！サンキュ～！・・・大我でいいよ」

Aに大我って名前で呼んでもらいたくて・・・じゃなくて、“仲良くなるために”名前で呼んでいいよとAに告げた。

Aの顔を覗いてほほ笑んでみた。驚いて頬を赤く染めるAが可愛く見えた。

今日俺なんか気分いいじゃん

戸惑うAをよそに、「じゃー行ってくるね！」と手を振った。Aも驚きながら「行ってらっしゃい・・・」と手を振った。この感じがなんだか懐かしいし、なにより居心地いい。

一人暮らしが長くて忘れてた。誰かに行ってくるって言えるってこんなに気分がいいと。

結局、バイトはギリギリでAから貰った物の食事はできなかった。