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3主人公 ページ3

「いらっしゃい!・・・あっ!きょも!」



「よ!」



樹くんに手を上げて店の中を見渡した男の子は、金髪で色白で華奢な肩にギターの入った黒いケースを持っている。



「今日いっぱいだね・・・」



「金曜日だからね。ここなら空いてる」



樹くんはカウンターに座る私の隣を指した。それと同時に金髪の彼と目が合う。私も隣どうぞ!という意味で軽く会釈したのに、プイっと顔を背けて仕方なさそうに席に座った。



何この生意気なガキ・・・と思いながらカウンターに向き直ってビールを飲む。



「樹、いつもの!」



どうやら彼は常連らしくて、樹くんとも仲がよさそうに見えた。



いいな・・・知り合いが近くにいるなんて・・・私は彼氏も友達も家族も置いてここへ来た。この知らない土地に知り合いなんていなくて、こうして一人で寂しく飲んでる。



友達にも家族にも婚約破棄されたことはまだ言ってない。てか、言えない。友達にはさんざん婚約おめでとう!なんて祝ってもらって、それが破棄になったなんて笑いもの。



父と同じ会社の彼は、仕事もできるし父のお気に入りだった。婚約したって話したら喜んでいたから彼を失ったなんて言えない。特に父には。



それもあるけど、まだ自分の中で整理がついてない。心のどこかではこれは夢かもしれないって現実を受け入れらない自分がいる。だからまだ誰にもこの話はしてない。



はあ・・・



うじうじしている自分とこんな現実にため息が出た。



「・・・ちょっと、そんな大きいため息つかないでくれる?」



「あ、すみません・・・」



先ほど隣に座った金髪の彼に怒られた。たばこを咥え慣れた手つきで火をつけて、ゆっくりとその煙を吸いこむ。




生意気だけどきれいな顔立ちをしていて、何しても似合う彼を見つめた。



「・・・え?なに?」



私の視線に気づいた彼が私を見下すような目でこちらを見た。



「あ、いや・・・すみません・・・」



彼は露骨に迷惑そうな顔をしてたばこを咥え直した。

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作者名:えーじ | 作成日時:2019年11月19日 23時

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