全て捧げろ (ページ18)

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１８主人公ページ18

「私ね、３年付き合った彼に婚約されてたんだけどね、彼浮気してたの。私はそのこと知ってたけど、ずっと目をつむってた。私には彼しかいないから・・・」

京本くんは静かにたばこを吸っている。それでも私は独り言のように続けた。

「彼、私のお父さんと同じ会社で働いててお父さんのお気に入りなの・・・この婚約もお父さんが喜んでるから破棄されたなんて言えなくて。浮気もずっと我慢してたけど、結局彼は婚約者の私より浮気相手を選んだの・・・」

自嘲するように笑うと京本くんは煙をスーっと長く吐いた。

やっぱり私の話なんか興味ないよね・・・と少し落ち込みながらも、独り言として言ったことだから仕方ないか・・・と受け入れた。

しばらくの沈黙の後

「独り言の独り言だけど、その男よりいい人いるだろ。すがりつく必要ねえよ」

京本くんは私の話を聞いていたようでそう言ってくれた。聞いてくれていたことにも嬉しく思ったけど、私にそんなこと言ってくれる人がいるなんて思ってなかったからちょっと驚いた。

誰にも話せないでいたから励ましてもらえたような気分。

「うん・・・ありがとう」

彼なりに励ましてくれている気がして素直に感謝を口にした。気づけばもうアパートまで来ていた。

「ねぇ、京本くん。今夜もお邪魔していいの？」

さすがにこんな話をした後だからうざいかな？と思ったけど、もう少し京本くんと居たい気がしてそう口に出してみた。

「別にいいよ、寝る前にくれば？」

京本くんは表情一つ変えずにぶっきらぼうに吐き捨てて自分の部屋に入っていった。なんだか照れてる小学生の男の子のようにも見えた。

それからというもの、毎晩のように京本くんの部屋にお邪魔した。最初は一人の夜よりマシだから、京本くんのお言葉に甘えよう。と思っていたけど最近では、少し楽しみにしている自分もいる。

睡眠薬のように京本くんの歌声を聞いて眠った。私たちは特に何か話すわけでもなく、お邪魔して歌声聞いて眠って朝を迎える。

京本くんは居酒屋から帰ってきてから深夜遅くまで歌っているのに、いつも私より先に起きていて、私が起きるとすぐにバイトに向かう。ちゃんと寝てるのか心配になった。