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貴方視点

暗闇を歩いていた

何も見えない

何も聞こえない

何処を歩いてるかなんてわからない

だけど

とある声だけが聞こえた

知っている声

何度も聞いていた

私の大切な人の声

«…頼む…起きてくれ………»

あぁ…

私はまだ

死んでいないのか…

なんて思ってしまう

だけどその声が聞こえる方に足を進める

起きないと…

だけど

足がナニカに固定されたかのように動かなくなった

私が起きて何になるんだ?

誰のためになるんだ?

私が生きて…

何がある?

なんて…

思ってしまった

私は多くの人を殺した

警察だけど

私は…

人殺しだ

なら…

もういっそのこと

戻らないほうがいいんじゃないか…

左手を強く握りしめる

すると突然立っていた場所に穴が空き

落下する

「!?」

重力に従って落下のスピードが増す

すると

ボチャン!!!!

暖かい水のようなものに包まれる

暖かい…

まるで…

何かに抱きしめられているかのような感覚だった

「……(ゼロ)…?」

そう自分にしか聞こえぬ声で呟く

呟いた後

光に包まれた

「!」

それに驚き

目を見開く

そこは…

「………びょ…う…いん…?」

病室の天井が視界いっぱいに映り込む

鼻をツンと刺すような消毒の匂い

薄暗い病室に入り込む月明かり

私は力いっぱいに起き上がった

「ッ……」

覚束ない足取りで

窓際へと移動する

ベッドの横にあった棚には

誰かが生けた花と

兄の黒い帽子が置かれていた

「……兄さん」

帽子にそっと触れる

それと同時に腹に痛みが走る

「ッ…」

傷はまだ完全に塞がっていないようだ…

「……」

此処にはいられない

そう思った

頭でそれを思うのとすぐ後に

病室を静かに出る

素足で歩いているため

ペタペタと廊下に音が静かに響く

私の居場所は…

この場所じゃない

私のあるべきところは……

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作者名:箔月 | 作成日時:2023年7月17日 17時

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