330【とある兄妹】 ページ30
貴方視点
昔は
とても仲の良い兄妹だと孤児院で噂になっていた
「！お兄ちゃん!!今日何して遊ぶの？」
兄「そうだな…何がしたい？」
「お兄ちゃんと遊べるなら、私は何だって楽しいよ！」
兄の名前は陣と言った
私と同じ髪と目の色をしていた
だけど
この容姿のせいで
私はいじめられていた
«アンタなんかが陣君にベタベタするな!!»
«陣君が可哀想だよ。こんな出来損ないの妹いるなんて»
«ちょっとは年上に気を使ったら!?»
「……」
陣「どうした？A」
「！うんん。なんでもないよ、お兄ちゃん！」
陣「そうか」
「そういえばね、今日学校で友達できたんだ！」
陣「そうか、よかったな」
「うん！松田陣平君と萩原研二君！とっても優しいんだ。見た目なんて気にしない、とても優しい2人なんだ。今度お兄ちゃんにも紹介してあげるね！」
陣「それは楽しみだな。待ってるぞ」
「うん！」
私は父と母を知らない
兄はなんとなくで覚えてるらしいが
私には全く記憶がなかった
だけど
それ以降の記憶は全て覚えていた
人の名前、顔、性格
一度通ったことのある道
一度見た授業やプリントの内容
孤児院の先生に怒られた回数
女の子達にいじめられた回数
それを今も全て鮮明に覚えている
「あ！お兄ちゃん!!」
この時の兄は様子がおかしかった
陣「……あぁ…Aか…」
十歳の誕生日を迎えた兄だったが
なにかおかしい
「お兄ちゃん？どうしたの？具合でも悪いの？」
陣「なんでもねぇ」
そう言って
兄は誤魔化した
私はそれが気になって仕方がなかった
だから
こっそり孤児院から抜け出した兄の後ろをついていった
この時からだった
私と兄の関係が崩れだしたのは
兄の誕生日から数日の
少し肌寒い時だった
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作者名：箔月 | 作成日時：2023年6月21日 20時
