gからの内通者【wrwrd!】 (ページ29)

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檸檬ページ29

sha｢あ！グラシアおった！｣

トンさんに命じられて各部署へ種類を配りに行っていたその帰り。
後ろから両手が伸びて止められる。
声からして、シャオロンさんだ。

『シャオロンさん。』

sha｢良かったー、用事があってな？｣

ポケットから何かを出した。
綺麗にラッピングされており、小さい箱みたいなもの。
不思議に思っていると、それを手に包まされた。

『えっと、これ』

sha｢俺から。みんなにはナイショな。｣

『そんな…いただけませんよ。申し訳ないです。』

sha｢いいんよ。初日の書類仕事、俺がやらなあかんかったところやってくれたやろ？｣

だがこれは相当高い記憶がある。
街を歩いていた時、他大学の女学生がこぞって社会人の彼氏に強請っていたものだ。

sha｢受け取ってもらわな困るんよ。グラシアのためだけに作らせたんやで？｣

なぜ、そこまで？
理解に苦しんだ。
彼は少し照れくさそうに持っていない手を掴む。

sha｢申し訳ないってなら、今度の休み、俺にくれへん？｣

『お休み、ですか？』

sha｢おん。一緒にお出かけしよ！｣

『…はい、シャオロンさんとお出かけしたいです。』

久しぶりに街に行きたいと思っていた。
都合の良い提案だし、彼が誘ってくれたのだ。
断る理由がない。

sha｢じゃあ…明後日やな！大丈夫？｣

『はい、大丈夫です。』

sha｢じゃあ、楽しみにしとるからな。｣

彼は鼻歌を伴いながら去っていった。
プレゼントを持ったまま書記長室に帰る訳には行かなかったので、自室へ戻る。

気になってしまい、包装紙を剥がすと綺麗な香水瓶が入っていた。
高級そうなラベルには檸檬と書かれており、シャオロンの象徴色をしている。

ハンカチにつけてみれば、柑橘系のあの爽やかな香りが広がる。

『素敵な香り。』

なら彼とのお出かけの日にはこれをつけていこう。
乙女特有の心の高鳴りには逆らえなかった。