小鳥遊煌凜の怪異帳第一章前編【陽炎町怪奇譚】 (ページ26)

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弐拾参ページ26

「構いませんよ。予定は其方にお任せします」と再度返信をすると、彼女は「なら明後日。今日お会いした場所で」と返って来た。俺はすぐに承諾のメールをする。
このやり取りを数回繰り返した後、軽く挨拶を交わして終わらせる。久しぶりに電子メールを使ったから、とても緊張した。俺が高校生だった時は、親友によくメールしていたのになと懐かしみつつ、畳に寝転がった。

──そうだ。たった今考え付いたのだが、頼み込めば何とかしてくれるかも知れない。
重い身体を起こし、俺は自室を出て行った。

数日後、月寧さんに外出の許可を貰い、待ち合わせの場所で待機する。
数分経った辺りで、五百扇さんがやって来た。待ち合わせの場に現れた彼女は相変わらず洋服姿だ。理由は単純で、単に着物の着付けが出来ないらしい。
約束通り、飲食店を中心に探偵を探す。“探偵を探す”だなんて、シャレにもならない文章になっているのは気のせいだ。
恐らく、瓜生さんは色んな地区を転々としているんだろうから、簡単には見つからない筈だ。あまり期待せず、ゆっくり手分けして探索する。

だが、数時間後には公園のベンチで項垂れる俺達が居た。

「今日は弥生区には居ないんですかね?」
「その可能性もあるけど、まだ探してない所もある筈。目立つ外見だし、きっとすぐ見つかるよ」

根拠もない事を言ってるんだと呆れてしまうが、こうして自分を奮い立たせなければ心が折れてしまう。同時に、年上としてのプライドが許さない。学生で、未成年でもある彼女が頑張っているのに、職にもついて、成人している俺が折れてどうするんだと言う、心底どうでも良い自尊心でそんな言葉を口走っているのだ。惨めだなと思いつつ、豪語したからには責任を取らない訳にはいかないので、ベンチから立ち上がった。

「ご苦労様です。これでも飲んでリラックスして下さい」
「どうも……って、え!?」
「わっキャア!?」

突如、背後から暖かいココアの缶ジュースが現れ、思わず飛び跳ねて後ずさる。五百扇さんは驚き過ぎてベンチから滑り落ちてしまっていた。
後ろには、缶ジュースを片手で一缶ずつ持つ青年の姿。特徴的な銀髪に、金色の瞳。コートを羽織り、ショルダーバックを肩にかける変わった青年だ。
あれ? この特徴どこかで……。

「瓜生……詩織、さん?」
「あれ? よく知ってますね、僕の名前」

思っても見なかったラッキーな展開。
呆然とする俺達を他所に、青年は首を傾げながら、此方の様子を伺っていた。