弐拾壱 ページ24
そんな俺達を見兼ねたのか、少女は少し考える素振りをし、俺達に話を切り出す。
「どうしてもというなら、良い奴を紹介する。探偵なんだがな」
こんな町にも探偵がいるのか。
俺も探偵をテーマに小説を連載している為、少し興味が湧いた。
五百扇さんは俯いていた顔を上げ、「お、お願いします!」と大きな声で言う。
「この町に、瓜生志織と言う探偵を営む男がいる。普段はこの陽炎町を彷徨いておる。そうだな、大体喫茶店や食堂……飲食店でよく見掛けるな」
探偵、瓜生志織。
彼はこの町を中心に活動する青年だと言う。大食漢でよく飲食店に出没する。外見は銀髪に金色の瞳で、洋服を着ているからすぐに分かるらしい。
五百扇さんはリュックから出したメモ帳に、真剣にその探偵の特徴を書き込む。
「探し者に関する依頼なら、奴の右に出る者はおらん。これは私が保証する。只、依頼料が少し厄介だったりする時もあるぞ」
「構いません。教えて頂きありがとうございます」
「そう。まぁ、これ以上お前等の手助けは出来んし、そろそろ洋一郎の迎えが来る。次からは気を付けてくれよ」
そう言って少女は俺達の脇を通り抜け、此方を振り返らず、ひらりと手を振る。さながら危機を救った救世主の様だ。
年齢の割にカッコいいと感じたその少女が、後に巷で有名な町長、“宝条桜李”だと知る。
しかし、俺がそれを知るのはもう少し後の話だ。
時間はあっと言う間に過ぎ、すっかり日が暮れてしまった。そのお詫びに五百扇さんの居候先まで送る。意外にも、俺が居候する道具屋の近くだった事に驚いた。時代劇に出てきそうな、古い小さなお茶屋さんだ。
「今日は本当にごめんね」
「いえ、無駄では無かったんですから、寧ろ喜ぶべきですよ」
なんてポジティブな思考なんだ。彼女はどうやら、初見の頃のイメージより、ずっと明るい性格の子らしい。
……まぁ、彼女がそうだと言うのなら、素直に無駄では無かったと思っておく。
すると、彼女は何か閃いた様な行動をする。先程のメモ帳に何かを書き入れ、それを千切って俺に差し出す。
「これ、私のメアドです。これも何かの縁ですし、連絡出来た方が良いかなと思いまして」
まさかメアドが貰えるとは。この子思ったより大胆だ。しかし、彼女はつい最近まで高校生だった訳で、とっくに成人している俺が、それを受け取って良いものかと悩む。……これも彼女の好意な訳だし、不純な事には絶対に使わないと心で誓いながら、それを受け取った。
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作者名：十二月三十一日 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年3月13日 2時
