拾参 ページ16
中は殺風景で物が殆ど無く、僅かに開けられた障子から、太陽の光が虚しく差し込むんでいた。
その部屋の奥、敷かれた布団の上に座る女性の姿があった。先程まで寝ていたらしく、髪が少し乱れている。
年齢は母と同じぐらいだろうか。黒髪で肌が病的なまでに白い。とても儚いげな人だ。
彼女は手を挙げ、滑らかな動作で手招く。俺は布団の前まで歩み寄ると、彼女は満足そうに微笑み掛けた。
「貴方が煌凜さんね。初めまして、私は鳥羽山家七代目当主、
丁寧な動作をする彼女に対し、俺も姿勢を正して再びお辞儀をしながら挨拶を交わす。彼女の柔らかな表情は、あの和かな息子さんに何処と無く似ていた。
この人が鳥羽山家現当主、親戚一同を束ねている人なのか。彼女には失礼だろうが、先代の大婆様とは違い、弱々しく頼りない感じだ。大婆様は強く逞しい人だったから、余計にそう思えるのかもしれない。
「この度は急な呼び出しをした上、こんな姿で出迎えてしまってごめんなさい。迷惑でしたよね」
「いえ。此方も近い内に其方に向かうつもりでしたから、寧ろ助かりました」
「そう。でも、天誠が迷惑を掛けたでしょ? 分かっていますよ」
前言撤回。この人、意外と侮れない。くすりと笑うその瞳は全てを見透かしている様で、背筋が自然と緊張して伸びる。
すると、美空さんは案内役の青年を呼び寄せ、そっと耳打ちをする。彼は素直に承諾し、席を外した。
彼女は再び俺に目線を移し、少しだけ疲れた表情で本題に入る。
「御守りの件ですが、既に効力が切れていますよね?」
「はい。てっきり道具屋で直してもらったのかと思ってたんですが……」
「無理もないです。陽炎町には鳥羽山家、雲類鷲家、そして
もう一軒あったのかと驚いた。
俺達の家系は、本家の鳥羽山家を筆頭に、
話が脱線し掛けたので、美空さんが「話を戻しますが」の一言で頭を切り替える。
「その御守りは、先代当主が特殊な技法で作った物なんです。しかし、先代も亡くなり、私もこの身体では御守りを再び作り直す事が出来ないのです」
「じゃあ、御守りは……」
美空さんは申し訳無さそうに顔を俯かせた。
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作者名：十二月三十一日 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年3月13日 2時
