39.君の涙には弱いまま ページ39
．
二千十二年、春の高校バレー県予選。
烏野高校 vs 白鳥沢高校の試合中、月島蛍がバレーにハマるその瞬間を、観客席からAは見ていた。
敵のエースの強烈なスパイクをドシャットで止めたあの日、あの時、いつも熱の冷めた態度で飄々とバレーをしていた彼が、誰よりも大きな声であの一点を喜び、噛みしめていた姿に鳥肌が止まらなかった。
身体の奥底から湧き上がるひどく熱いもので、胸が詰まって泣いてしまいそうになった。
ほら、やっぱり。バレーボールはこんなにも面白いのだと、叫び出したくてたまらなかった。
あの時感じた感動は、かつて兄と共にテレビ画面越しに見た初めてのスパイクの衝撃と同じ＿＿いいや、それ以上のものだったかもしれない。
試合終了後、Aは一目散にその場を飛び出して、愛する兄ではなく月島の背に飛びついていた。
『ツッキー、バレーは楽しいでしょ！？』
興奮冷めやらず、泣きそうなのか笑っているのか分からない顔で勢い込んで尋ねたAに、「まあまあかな」と子供のように笑った彼の表情は、今だって昨日の事のように思い出せる。
あの笑顔を見て、Aの心はまたしても震え、はちきれんばかりの歓喜に包まれたのだから。
バレーボールは面白い。
彼がバレーを好きでいてくれることが、こんなにも嬉しい。
月島の笑顔をニコニコと機嫌よく眺めていると、そんなAの態度に肩透かしをくらったのか、彼は徐々に笑いを抑えながら、「それじゃあそろそろ僕は行くけど」と、自販機にお金を投入し始めた。
「何かオススメとかある？」
『私は今このサイダーが飲みたいです』
「当然のように奢らせようとするな。君はこれが気に入ってるの？」
『んふふ、冗談冗談。そうなの、最近ハマってて＿＿』
言いかけた途中で長い指がサイダーのボタンを押すのを見て、『あ、ホントにそれにするんだ』とその素直な行動にやや驚いていると、かがんでペットボトルを取り出した月島がそれをそのまま差し出してきたのでAは二度驚いた。
「ハイ、あげる」
『え……！？ あ、いや、別に私は本当に奢ってもらおうと思ったわけじゃ＿＿』
「僕は最初から奢る気だったよ。自分の飲み物ならもう持ってるし」
『ええ……ッ！？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 907人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メケメケ(プロフ) - とお。さん» とお。さ〜ん！🙌私にこんな画力はありません！お借りしたイラストです！笑 ですが褒めていただけて嬉しいです、ありがとうございます☺️一人の女の子にだけ弱々なツッキーを綴っていきます！笑 (2月29日 14時) (
レス) id: 9f81822037 (このIDを非表示/違反報告)
メケメケ(プロフ) - みりかさん» みりかさん！またしても「天才」ありがとうございます！恐れ多いですが嬉しいです！笑 (2月29日 14時) (レス) id: 9f81822037 (このIDを非表示/違反報告)
メケメケ(プロフ) - 玲衣さん» えーーとっても嬉しいです！！😭🙏 こちらこそ素敵な褒め言葉ばっかりいただいちゃって感謝感激です！これからもこの調子で進んでいきますのでぜひお楽しみください！☺️ (2月29日 14時) (レス) id: 9f81822037 (このIDを非表示/違反報告)
とお。(プロフ) - トップのイラスト、もしかしてメケメケさんがお描きに…！？美しすぎます😍ツッキー永遠に振り回されてくれ…… (2月29日 10時) (レス) id: c8ec7d17da (このIDを非表示/違反報告)
みりか - ほんと……天才です………(2回目) (2月29日 7時) (レス) id: 2c07cb6f0a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メケメケ | 作成日時：2024年2月17日 17時
