85夏 ページ35
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優太「夜光虫っていうんだ。」
「虫………？」
優太「虫っていっても、プランクトンなんだけどな」
ああ、頭が痛い。
岸くんの声が遠くで聞こえるみたい。
耳に響いてくる心臓の音。
そのうち耳鳴りまでしてきて。
キーンと頭の奥を刺すような。
幻想的な目の前の景色と相まって
夢を見ているような感覚に陥る。
ふわふわする。くらくらする。
ざわつく心。どこか落ち着かない。
何かをしなきゃいけないような
何かを言わなきゃいけないような
だけどその正体は分かるはずもない。
わたし、おかしくなっちゃってる。
優太「A？どうした？」
すぐ隣で岸くんの気配がする。
わたしの背中をそっとさする温かい手。
耳元に感じる息遣い。
優太「…大丈夫か？」
岸くんの声が二重に重なって聞こえた。
「岸くん、これ、この海。
私がさっき言ってた、夜の………
どうして。」
優太「俺さ、すげー嬉しかったよ」
「………え？」
優太「Aがどっかで、この景色を覚えてくれてたのが。」
岸くんの方を振り向いた途端、
その大きな手が頭の後ろに回って
優しく優しく引き寄せられる。
温かい温もりと、懐かしく感じられる匂い。
優太「………A、ごめんな。」
どうして彼は謝ってるんだろう。
頭痛は治るばかりか
脈打つように痛み始めて
胸のあたりがギュッと締め付けられる。
優太「あの時、なんもしてやれなくてごめん。」
ごめん
………ごめん
岸くんは何度も繰り返した。
だんだん声が震えていくのが分かった。
そのうち肩のあたりが
きっと岸くんの涙で、生温かく濡れ始めていた。
「………岸くん、」
わたしは戸惑った。
あの時って、いつのことだろう。
わたしたちの間に何があったんだろう。
抱きしめられる腕にどんどん力が入っていって
息をするのが苦しい。
それでも、どうしてか離してほしいとは思わなかった。
.
優太「A、幸せか？」
耳元で聞こえる震えた声。
同時にどこからか押し寄せる、夏の風。
�爐�前が言えねーなら、俺が聞いてやるよ��
��A、どうしてほしい？��
頭の中で、紛れもなく岸くんの声が反響した。
幻覚なのかそうじゃないのか、分からなかった。
ひとりでに、瞳から涙が零れ落ちた。
私は岸くんの体を、きつく抱きしめ返した。
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雨音(プロフ) - mintさん» 素敵なコメントありがとうございます。昔から知ってくださっているんですね…！わたしも、以前から応援してくださっていた方にまた読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございました…！ (2020年9月11日 19時) (
レス) id: 22fe178912 (このIDを非表示/違反報告)
mint(プロフ) - おつかれさまです！完結おめでとうございます！わたしの青春がまた戻ってきた気がしました。当時高校生だったわたしが読んでいた作者さんはここにもツイにも少なくなってきてるので待ってました。おかえりなさい！今回もごちそうさまでした！ (2020年9月10日 2時) (レス) id: 8d5d81a4f3 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - あんさん» こちらこそ、本当に本当にありがとうございました。次回作もお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年9月8日 21時) (レス) id: 22fe178912 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 夏(なの)さん» 長い間飽きずに応援してくださったこと、本当に嬉しく思います。言葉選びはすごく時間をかけているので、そう言っていただけて感動してます。これからも応援よろしくお願いします！ただいまです…！ (2020年9月8日 21時) (レス) id: 22fe178912 (このIDを非表示/違反報告)
あん(プロフ) - 完結おめでとうございます！そして、本当に本当にありがとうございました！！ (2020年9月8日 6時) (レス) id: 885a2db44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音
| 作成日時：2020年7月31日 21時
