75夏 ページ25
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優太「………や、ごめん。あの…違くて、………」
彼は何も言おうとはしなかった。
出てきてしまいそうな言葉を必死で噛み殺すように
口元をぎゅっと結んでいた。
優太「………いいんだよ。俺のことはさ。」
「どうして？」
優太「俺は、Aの幸せには邪魔になるから。」
決して目を合わせはしない。
逸らすことに必死になっている。
こんなにも分かりやすいのもまっすぐなのも彼らしいと
彼のことなど知らないはずなのにそう思った。
気がつけば私は、
岸くんのぎゅっと結ばれた拳を両手のひらで包んでいた。
手の中で小刻みに震えている、岸くんの拳。
私はこの手の温もりを知っているはずなんだ。
この声も聞き慣れているはずだし
この真っ直ぐさも知りすぎているはずなんだ。
どうして。
優太「………アイツは、永瀬は、
Aのことすっげー大好きだし大事に思ってるし
だから、それでいいんだって。な…？」
たしなめるような岸くんの言葉に、
私は黙ってはいられなかった。
「私の気持ち、分かってよ。
………少しくらい分かろうとしてよ。」
情けないほど震えた声だった。
私の心は懇願した。
彼とのすべてを知ることを。
.
優太「………なんもないよ、別に。」
「………え？」
優太「ただ、俺が一時期ちょっと好きだっただけ。
永瀬と付き合ってるって分かってからすぐ吹っ切れたし
…ほんとそれだけ。
Aには好きだって直接伝えたこともあるから
まあインパクトはあっただろうし、
だからふとしたときに名前出てきたんじゃねーの？
ほんと、俺らの間にあったのってそんなもんだよ。」
淡々とした口調だった。
あまりに早口で拍子抜けしてしまった。
岸くんの言葉を噛み砕くには、少し時間がかかった。
「え、あの………」
優太「うん。だから、それだけ！
この話はもう終わり！
Aが記憶失くしたって知って心配になって
それで手紙書いてみただけ。深い意味はなかったよ。
…混乱させてごめんな。」
綺麗な歯を見せて、申し訳なさそうに笑って、
そうして岸くんは早々に話を切り上げた。
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雨音(プロフ) - mintさん» 素敵なコメントありがとうございます。昔から知ってくださっているんですね…！わたしも、以前から応援してくださっていた方にまた読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございました…！ (2020年9月11日 19時) (
レス) id: 22fe178912 (このIDを非表示/違反報告)
mint(プロフ) - おつかれさまです！完結おめでとうございます！わたしの青春がまた戻ってきた気がしました。当時高校生だったわたしが読んでいた作者さんはここにもツイにも少なくなってきてるので待ってました。おかえりなさい！今回もごちそうさまでした！ (2020年9月10日 2時) (レス) id: 8d5d81a4f3 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - あんさん» こちらこそ、本当に本当にありがとうございました。次回作もお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年9月8日 21時) (レス) id: 22fe178912 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 夏(なの)さん» 長い間飽きずに応援してくださったこと、本当に嬉しく思います。言葉選びはすごく時間をかけているので、そう言っていただけて感動してます。これからも応援よろしくお願いします！ただいまです…！ (2020年9月8日 21時) (レス) id: 22fe178912 (このIDを非表示/違反報告)
あん(プロフ) - 完結おめでとうございます！そして、本当に本当にありがとうございました！！ (2020年9月8日 6時) (レス) id: 885a2db44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音
| 作成日時：2020年7月31日 21時
