51夏 ページ1
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ここはどこだろう。
と、思うのと同時に
男の人の顔が視界に映り込んだ。
目を真っ赤にして、頬をびっしょり濡らしていた。
この人は誰なんだろう。
どうしてこんなに泣いているのだろう。
耳元で聞こえる電子音
薬品の香り
体のいろんなところから伸びているチューブ
＿＿＿病院？
＿＿＿私、どうかしちゃったの？
疑問が疑問を呼び、
頭の中がごちゃごちゃになる。
「………あなた、誰ですか？」
いたって自然なはずのその質問に
目の前の男の人は絶句した。
すごくすごく、驚いた顔をした。
そしてそのあとすぐに、悲しい顔になった。
病室の扉が勢いよく開く。
彼は看護師さんに強く手を引かれて出て行った。
.
何が起こっているか、
考える暇もなくまた扉が開いて
今度は白衣を着たお医者さんが私のそばに来た。
穏やかに笑っていた。
『意識戻りましたね。おはよう。』
「おはよう、ございます………」
『ここがどこか分かりますか？』
「病院、ですか？」
『では、お名前を教えてください。』
「………高野Aです。」
目の前の医者は、
カルテのようなものに逐一メモをとっていた。
『なぜ、あなたが病院にいるか分かりますか？』
「分かりません。」
考えることもなく答えた。
いや、そもそも、考えることがなかった。
空っぽの箱の中を見ているような感覚。
『先ほどの男性の名前は？』
「知りません。さっき、初めて会いました。
………でも、あの人は私の名前を知っていました。」
自分でそう口にしてから、ハッとした。
さっきの男の人の言動。
それから、お医者さんの質問の意図。
それらがリンクして
ひとつの答えを導き出した。
信じられないけれど、信じたくないけれど
「………わたし、記憶がないんですか？」
医者は一瞬戸惑ったようにみえたけど
すぐに口を開いた。
『………そのようです。
入院と、詳しい検査が必要になるので………
ちょっと、待っててくださいね。』
そう言い残して、出て行ってしまった。
分からない。
自分の名前は分かるのに。
私がどうしてここにいるのか
何があったのか
………でも、覚えてる。
覚えてることもある。
必死に探ると、幼い頃の記憶が脳裏に蘇ってきた。
その記憶から、順番に辿ることができる。
小学校、中学校………
ひどい頭痛がする。
同時に睡魔が襲ってきて、
私は眠りについた。
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雨音(プロフ) - mintさん» 素敵なコメントありがとうございます。昔から知ってくださっているんですね…！わたしも、以前から応援してくださっていた方にまた読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございました…！ (2020年9月11日 19時) (
レス) id: 22fe178912 (このIDを非表示/違反報告)
mint(プロフ) - おつかれさまです！完結おめでとうございます！わたしの青春がまた戻ってきた気がしました。当時高校生だったわたしが読んでいた作者さんはここにもツイにも少なくなってきてるので待ってました。おかえりなさい！今回もごちそうさまでした！ (2020年9月10日 2時) (レス) id: 8d5d81a4f3 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - あんさん» こちらこそ、本当に本当にありがとうございました。次回作もお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年9月8日 21時) (レス) id: 22fe178912 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 夏(なの)さん» 長い間飽きずに応援してくださったこと、本当に嬉しく思います。言葉選びはすごく時間をかけているので、そう言っていただけて感動してます。これからも応援よろしくお願いします！ただいまです…！ (2020年9月8日 21時) (レス) id: 22fe178912 (このIDを非表示/違反報告)
あん(プロフ) - 完結おめでとうございます！そして、本当に本当にありがとうございました！！ (2020年9月8日 6時) (レス) id: 885a2db44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音
| 作成日時：2020年7月31日 21時
