【HQ】無理して、好き。【稲荷崎】

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『……無い』



今日は体育がある日。ロッカーに置いてあった、ジャージが入っているはずの袋が無くなっている。
筆箱、教科書、お弁当。その次はジャージ？くだらない。

友達との関係がぎこちなくなって数日、私の持ち物が頻繁に無くなるようになった。
隠しているのは同じグループに居った友達やと思う。話しかけようとしても無視されるし、完全にハブられてしもうた。

こうなりたくなくて、無理して合わせていたのになあ。

隠されたものは、いつも人気がない場所にぽつんと置いてあったり、ゴミ箱の中に入れられていたり。
今日はどこにあるかなぁ。

見つけてから着替えていたら、体育の時間に間に合わない。
先生に怒られたないし、早く探さんとな。





「お、狐森来たな〜？遅いぞ〜」

『すみません』



急いで着替えてきたから、なんとか授業開始に間に合った。
友達の方をチラッと見ると、私を見ながら薄っすら笑っていた。そんな顔したら、私達がやってますよって言うてるようなもんやで。

私は重い腰を上げて準備体操を始めた。





「ううー！疲れたー！」

「今日の体育はしゃぎすぎたな！」



友達5人の後ろを独りで歩く。こんなことしてる自分が、嫌で嫌で仕方ない。



「なあA〜？」



前を歩いていた友達が後ろを振り返り、私を見る。
ああ、この目はきっと＿＿＿＿＿＿



「お腹空いたから購買で何か買って来てやー」

「さんせーい」



……賛成ちゃうし。
こうやってパシられるのも、お前はもう独りやでっていう意味やんな。

歯向かう元気すらあらへん。



『わかった。買ってくるからお金ちょうだい』

「え？Aの奢りやろ？」

『は？』

「Aのお金で買ってきてくれるんちゃうの？」

「ケチくさ〜」



な、んやそれ。なんで私のお金で。有り得へんやろそんなの……。
ここまでするのは、本当に私のことが嫌いやからなんやなぁ。

流石にそこまでは出来へん。



『無理や』

「……は」

『あんたら皆の分を私のお金で買うのは無理や。お金くれへんなら買わん』

「おー言うなあ」

『……私のお金で買わせる気なら諦めてや。ほな、私先に教室戻るわ』



私は友達を抜かして教室へ向かった。

なんで、なんでなん。
こんなことになるなら宮くんなんかと話さなきゃ良かった＿＿＿＿いや、それはちゃうやろ。こうなってるのはアイツらのせいで、宮くんのせいやない。

悔しくて。悔しく悔しくてたまらんくて。涙が流れそうになるのをグッと堪える。



「＿＿＿＿A！」

『え……？』

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