【#コンパス】叶わぬ時間 (ページ2)

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＊1話ページ2

自分の誕生日、出生地、両親……そんな物は私は知らない。

気づいたらそこに居た。

どうしてか身体がボロボロで血が出ている所もある。

だけど不思議と痛みは感じなかった。

小さく痩せた身体の少女は不思議そうに周りを見渡して肩を落とす。

ここは……どこ？

聞く相手すら居なく消えていく言葉。

そんな少女の背後から声が掛けられる。

「どうしたの？」

優しい声、その方に顔を向けると心配そうに覗き込む女の人が居た。

「誰？」と思いつつ体ごと向き直ると、その人は驚いた表情をして近づいて来た。

「まあ！こんな酷いこと、誰にされたのっ？！」

『……ひどい、こと？』

何が酷いのか、何に慌てているのか分からなくて首を傾げて聞き返す。

少女が分からない間にもその人は優しく手を取り抱き締めてくれた。

「こんなに痩せちゃって……どこから来たの？」

身体が離れしゃがんだ彼女と真っ直ぐ目が合う。

『どこ…？分からない』

「じゃあ、お父さんやお母さんは？」

『……お父さん、お母さんは居ないよ？』

その言葉で彼女の瞳が大きく揺れる。

まだ幼い少女の言葉だからこそ強く胸を打たれたのだろう。

悲しげに少女の髪が撫でられる。

その間も少女は動かずに、ただ不思議そうに彼女を眺めていた。

すると彼女の目から一筋の涙が流れ、少女は目を丸くする。

『お姉さん……どうして、泣いているの？』

「……ううん、ちょっと悲しくなっちゃっただけよ。心配しないで？」

そう微笑むが、また涙が流れていよいよ心配になった少女は、綺麗な髪に触れて頭を撫でる。

『お姉さん、泣かないで？』

ヨシヨシとぎこちない手つきだが想いは伝わったようで、「ありがとう」と言って手の甲で涙を拭った。

「よし、決めた！一緒に行きましょう」

そう言って立ち上がった彼女は、少女に手を伸ばして笑う。

行く…？

それはどこへなのか。

自分が踏み込んでいい場所なのか。

必死に色々と考えても少女には分からない。

だけどこの人と居たら安心出来る。

何かが頭の中で合わさるような感じがして、少女は小さな手を伸ばして歩いて行った。