第25話 海 ページ26
イ「・・・。」
『・・・あの・・隣いいですか？』
イ「！」
一人でぽつんとうずくまっているイナリにAは声を掛ける。
イナリは小さくこくんと頷いた。
『ありがとうございます。』
Aはしばらく、イナリと海を見ていた。
夜の闇に飲み込まれた海は真っ暗で、何も見えない。こんなものを見て、イナリが何を思うかなんて、Aにはよくわからなかった。
だから、しばらくイナリと一緒に海を見ていたのだが、結局何もわからなかった。
きっと、本人にしかわからないことなんだろう。と勝手に自分を納得させて、Aはイナリに話し掛ける。
『・・あの、さっきはすいませんでした。まだ怒ってますか？』
イナリは微かに首を横に振った。
『・・ありがとうございます。優しいですね、イナリさんは。』
その言葉に、イナリは何も反応しない。ずっと海だけを見ている。
『・・うずまきさんのこと、悪く思わないでください。
うずまきさんは不器用なんです。』
イ「・・・。」
『・・タズナさんから聞きましたよ。イナリさんの父親のこと。
うずまきさんも、同じなんです。生まれた時から、父親がいない、というより、両親の顔も知らないんです。
それと、確か友達もいなかったとか・・・。』
イ「え・・・？」
イナリはAの顔を見る。Aの表情は暗く、悲しそうに見える。
『ま、後はそこにいるカカシさんから聞いてください。』
Aが後ろの柱にそう言うと、カカシが柱の陰からでてくる。
カ「あれ？ばれてた？」
『・・それじゃ、私は仕事があるので。イナリさん、また。』
Aはにこりと笑ってその場を去った。イナリは頬を微かに赤らめる。
カ「Aは将来、絶対美人になるよ。」
ハハハと笑うカカシだが、その笑みはだんだんと悲しそうになっていく。
カ「・・Aもね、ナルトと似たようなもんなんだよ。
ナルトもAも、誰かに認めてもらいたくて一生懸命で、夢のためなら何時だって命懸けなんだ。
アイツらはもう、泣き飽きてるんだろうな。」
イナリは考えるように目線をカカシから海へと動かす。
カ「だから、強いってことの本当の意味を知ってる。君の父さんと同じようにね。」
イ「・・・。」
夜の闇を照らす月は、雲からようやく顔を出して、海を明るく照らし出す。
だがその月は、何か良くないことが起きる前兆のように、すぐに雲に飲まれて見えなくなってしまった。
海はまた、真っ黒に染まる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 243人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冰輪(プロフ) - なんでアカデミー生なのに額当てを持っているんですか？額当てはアカデミーの卒業試験に合格したら貰えるので、ナルトたちが、夢主が額当てを持っていないことを疑問に思うのはおかしいと思います。 (6月26日 18時) (
レス) @page4 id: 3dfd0d46a5 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - 面白かったです。更新頑張って下さい。 (2015年8月17日 15時) (レス) id: e1639afb21 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - 指摘ありがとうございます！これでおそらく直ったと思います。 (2015年8月12日 19時) (レス) id: d8a9357a87 (このIDを非表示/違反報告)
月夜 - 第30話の所、「部活」ではなく「部下」なのでは？ (2015年8月12日 0時) (レス) id: dc88ce6dac (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - 名前が艦☆れ、、、 (2015年8月7日 19時) (レス) id: 3b57a464f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：陽炎 | 作成日時：2015年7月25日 3時
