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第二十二話 ページ25

「『目を見張る』は、名前から推察出来るとおりに、人に宿る蛇を監視する能力です」
 すかさず、キドが重ねて質問をする。
「監視、というのはどこまでの事が出来るんだ」
「現在位置の把捉、動向の把握が出来ます」
 わたしの答えを聞いたキドが、少し目を瞠った。ヒビヤが、小さく「僕の上位互換かよ」と呟いていた。
 続いて、シンタローが質問。
「お前は、やっぱり蛇の脱け殻に入ってたのか?いつから?」
 前に読んだ絵本に、大人は数字ばかりを気にしている、と書いてあったのを思い出した。
「蛇の脱け殻に入っていたのは間違いないです。いつからかというと…ざっと、一年前ですかね」
「一年前からオレ達を見てた、のか」
 そのとおりです。
 人のプライベートを覗いていたんだな、とやっと罪悪感が芽を出したが、八十八夜は過ぎているのですぐに摘まれた。わたしの手によって。
 モモがおずおずとこちらを伺っている。わたしは、ほんの少しだけ人気者気分の上機嫌で「どうぞ」と言ってみた。
「あの…ドールちゃんって、今どこに居るんですか?」
 場が静まった。
 正しさから出た重い質問。つまりはライトでヘビー。カタカナ万々歳。
 軽い言葉の遊びでは現実逃避になり得なかった。
「ドールはね、わたしのこの辺にいます」
 そう言って、わたしは自分の体のあちこちをぺたぺたと触る。
「この体全てがドールです。ついでに言うとわたしもドールで、でもドールの全てがわたしです」
 つまりは二人で一人。と言うには片方、つまりわたしに比重が偏り過ぎているけど。
「ドールはわたしに喰われたんです。コノハさんとハルカさんみたいな関係でしょうかね」
 おどけてみせても緊張は解けていない。非常に気まずいだろうが、そんなことを感じ取れる繊細さはわたしにはなかった。
「他には?」
そう訊いたのも、多分時間が無駄だから。
 しばらくして、カノが、じゃあ、と言った。
「君って、始めから居たの?」
 明瞭でない質問だった。意味を聞かなければ正確な答えは返せまい。本来ならご法度ではあるが、わたしは「どういう意味ですか」と訊いてみた。
 カノがにへらっ、と笑う。目が細くなって、瞳は隠れた。
「今のは何でもないよ。ただの前フリ、いやそれ以下だね。本命はこっちだよ。
『目を見張る』って慣用句、存在しないよねぇ?」
 なんで君がここにいる、否、いられる?
 そんな鋭さを含んだ真意を言外に臭わせる発言だった。

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作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時

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