最終話 ページ50
そこには、メカクシ団の全員がいた。
アヤノが、キドが、セトが、カノが、モモが、シンタローが、その手に握られたスマホからエネが、ヒビヤが、ハルカが、ヒヨリが。
何よりも、マリーが。
笑って、私の入団を祝う言葉を掛けていた。
時刻は夕方で、窓から突き刺さる西日が、部屋の中を劇的に見せていた。
サッと影が掛かり、何事かと思うと、「瞠る」の逆さの顔が覗き込んでいた。どうやら、私は彼女のスマホに居候する身で、今もそのスマホを「瞠る」が持っているらしい。
「どういう事だ?『隠す』は…?」
キドが上機嫌で応じる。新入団員が出来たのが嬉しくてしょうがないという顔だ。
「『隠す』は俺だ。なんてな…マリーとドールから聞いた。でもまぁ、上手い芝居だったな。全てを聞いた今でも、お前がずっと味方だったと思ってしまう位だ。
ともかく、入団おめでとう。団員No.は12、コードネームはミハル。合ってるな?」
そして気障に笑う。私は何がなんだか分からなくなりかけていて、頷くしかなかった。
「さて、と…じゃあ、パーティの用意をするから、悪いがリビングを出ておいてくれ。マリー、ドールとミハルに部屋の案内をしてくれるか?」
キドがそう言い、マリーが元気に承諾する。
「って、パーティ!?」
「私がワガママ言っちゃったの」
リビングのドアを開けつつマリーが言う。リビングと違い、少し薄暗い廊下に出た。廊下を進んで、間取りを確認していく。
「…ここが、私の部屋」
マリーが中に入るよう促す。小さいが、それだけに可愛らしい部屋だった。
私(スマホ)を何処かに立て掛け、その前にドールとマリーが座る。
「私も、皆に話すのは躊躇った。だけど、私たちの事を快く受け容れてくれたよ。パーティの用意もそうだし、お姉ちゃんのスマホを見繕ってくれたのも、皆だ。私は凄く嬉しい」
私はほとんど泣きかかっていた。姉と呼ばれたのが無性に嬉しかった。
「お帰り、お姉ちゃん」
人形という評価はどこへやら、柔らかに微笑む。温かく胸が満たされる。
そして、私以上に泣きそうなマリーも、目一杯に笑って言った。
「ありがとう。お帰り。…これからも、よろしくね」
心臓が高鳴る。何故か思い出すのは、一度きりの、頬に感じた柔らかさだった。
「…よ、よろしく。ドールと、マリー、も」
精一杯笑う。涙が一筋溢れる。
激しい動悸と甘酸っぱい予感が、私の胸を満たしていった。
〜〜『入団おめでとう! ドール&ミハル』〜〜
終わり←第四十五話
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作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時