欲望の向こう側part2 ページ10
キ「………」
貴「ぅ、…ぅ…」
それから数ヶ月過ぎた頃には、
Aは独り言を喋ることが多くなった。
まぁ、ろくに食べさせてもいないしトイレやお風呂には連れて行かない。
劣悪なこの環境はだいぶ堪えるだろう。
俺としても心苦しいが…
" 更生 "のためには致し方ないことだからな。
貴「ぅ、ぁ?ぁ、……あああぁぁぁぁあああ!?!!」
キ「………」
あぁ…ようやくか。
そろそろだとは思っていたが思わず口元がニヤついた。
貴「うわぁぁぁ…!!も、おうちかえるぅ…っ…」
一心不乱に頬が濡れていく。
どうやらようやく壊れてくれたようだ。
あの純粋無垢だったAが俺のせいで。
キ「A、大丈夫だ」
貴「うわぁぁぁぁんん…!!」
しゃくり上げるAに諭すように声をかける。
ゆっくりと目がこちらを向いた。
ぶわりと涙が伝り落ちていく。
貴「こ、こわいひとが…いるのっ…ひどいこと、する…っ!!」
キ「大丈夫だ、お前のことは俺が守ってやるからな」
貴「ほ、…ほんと…っ??」
潤んだ大きい瞳と目が合った。
何も知らない無垢そうな…
いや、壊れた目と言った方が正しいだろうな。
貴「んっ……」
腕を伸ばすAをそっと抱きしめる。
安心したいように顔を埋めてきた。
あぁ…なんて可愛いんだ…
欲しい…もっともっと…
Aに必要なのは俺だけで
Aの目に映ってていいのも俺だけ…
よく考えたらそんなの当たり前だったな。
キ「いいか?部屋の外には怖い奴らがいっぱいいてな…」
ビクッとAが怖がるような素振りをする。
キ「だから部屋から出ちゃダメなんだ」
貴「うん!うん!わかった!」
コクコクと必死に頷く姿。
まるで幼児にでもなったかのように、俺の言葉を精一杯聞いている。
まぁ俺が元凶だったことも分からなくなったくらいだもんな。
元が無垢だと染まるのも早いのか。
キ「あぁ…ほんといい子だな」
貴「…?ほんとっ!?わたしいいこ??」
「えへへ〜」なんて笑う姿に、
やっぱり邪な虫は始末しておくべきだろうなとも思い始めたのだった。
fin
38人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ソラ | 作成日時:2022年7月9日 21時