目を屠る話-2 ページ24
貴「…っ!はぁ、はぁっ…」
ぅ、あ……今のは夢…?
ぐっしょりとベットまで濡れてる。
そっか、今更なんて悪い夢をっ…
「大丈夫か?」
「う、んっ…」
今更あんなことを思い出したって…
“ 今 ”のみんなは私の存在すら知らないっていうのに…
貴「ねぇ、クロハ……クロハは本当に忘れないでいてくれるんだよねっ…?」
クロハには、私の能力なんて効かないらしい。
現に暴走した私と目を合わせても平気そのものだった。
そんなこと知っていても、どうしても確認せずにはいられない。
ク「…あぁ…、嫌な夢でもみたんだな…」
そっと髪に指が通る。
クロハの金色の目がゆっくりと私を捉えた。
この目だけが私を忘れないでいてくれる。
それだけは確かだと思えたら少しばかりホッとできた気がした。
ク「そういえば、そろそろだな」
貴「………」
そろそろ、っていうのは8月15日のことだ。
私にも決して無関係なことじゃない。
どうせ私も行かなきゃいけないことだから__…
貴「………うっ!」
むせ返るような血の匂いと無残に横たわるみんなの姿。
やっぱりこれだけは一向に慣れない。
はやく終わらせよう、ここに来たのはそのためだものっ…
シ「…ぅ、ぐっ…」
貴「…ごめんね」
ジっ…と、息も絶え絶えのシンタローと目を合わせる。
このまま終わらせちゃったらクロハにも私にとっても都合が悪いから…
この悲劇を忘れないためのシンタローの“ 焼き付ける ”
悲劇だろうと何だって忘れさせる私の“ 屠る ”
貴「ごめんね…っ…」
ク「悪いな。お前にとっては辛いだろうに」
そっと私を抱きしめてくる。
辛いだろう、なんて思ってもいないくせに。
でも今回もこの悲劇は絶対に終わらない。
いくら皆が頑張っても、かけるの子が奮闘しても…
きっと私が終わらせてあげられない。
貴「…さようなら…」
私、なんて馬鹿なことをしてるんだろう。
身勝手なのはちゃんとわかってるよ。
それでもね、
どうしても…
“ 忘れられたくない ”
そんなことの為に、
今回も私は大好きだったはずのみんなに背を向けたのだった。
fin
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作者名:ソラ | 作成日時:2022年7月9日 21時