花蝶【歌い手】 (ページ4)

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No.3 ページ4

sideそらる

｢あ、そらるさんお帰りなさい。どうしでした？｣
｢バレた｣
｢え？｣

引っ越しの片付けを手伝いに来てくれたまふまふ。

｢一ノ瀬さん｣
｢一ノ瀬さん？隣の人ですか？｣
｢うん｣

艶のある黒髪はかなり長くて、たぶん膝くらいまではあったと思う。
少し俺を警戒していた瞳も、真っ黒ながらも澄んでいた。

｢割と、可愛かったけど｣

ただ、見た目から想像できる年齢は14～17歳。
下手すれば犯罪レベルだ。

一人暮らしをしている辺り、高校生ぐらいの気もするけど。

一人暮らしだと思ったのは、靴が一足しかなかったのと、部屋が真っ暗だったこと。

親が仕事中だとも考えられるが、なんとなく、他に人が住んでる気配がなかった。

｢え、そらるさんそれツイートしたらヤバくないですか｣
｢え？｣

そらる＠――――
引っ越したら隣の人に即バレた

｢あ｣

無意識にツイートしていたらしい。
もし隣の一ノ瀬さんがリスナーなら、住所を拡散されてもおかしくはない。

そう思った俺は、自分でも驚くくらいの早さでツイートを消した。

ただ、俺のツイートの通知を入れてる人もいるだろう。
そこまではさすがに消せない。

｢あー……｣
｢バレないと良いですね｣

一ノ瀬さんは、人の個人情報を拡散するようなタイプではない気がした。
だけどそんなの、ただの勘だ。

拡散されても、責任は俺にある。

――ピンポーン

誰だ？

｢はい｣
｢あ、一ノ瀬です｣

――ガチャ

｢こんにちは｣

隣の一ノ瀬さん。

｢どうかしましたか？｣
｢さっき、そらるさんかどうか聞いたんですけど、別に住所拡散したりはしないですから｣
｢あ……ありがとう、ございます｣

そんなことをわざわざ言いに来てくれたのか。

｢それで、ですね……実は私も、同じ界隈の人間なんです｣
｢え｣

同じ界隈。
彼女も、歌い手なのか。

見たことはないし、この声の女性歌い手は知らないし、そもそもこんな若い歌い手がいるのか。

｢聞いたことないし、見たことないけど｣
｢そりゃあ、年齢とか言ってないし、顔出しも生放送とかもしてないですし｣

顔出しも生放送もしていない。
それだけで大方の予想はついた。

｢……あめりる……｣
｢あ、そうです、あめりるです。さっきメリーバッドエンド投稿した人です｣
｢マジ……？｣

地声からして綺麗で、容姿も完璧で、頭もよさそうだ。

高嶺の花。
正にその通りだと思った。