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｢もうすぐ面会時間のだから学生は早めに帰ってねー｣
頬のほとぼりも冷めてきた頃、廊下から顔を覗かせた看護婦にそう告げられた
気付けば、雲が赤く染まっていた
｢すみません、もう帰ります｣
そう言ってベットの傍に置いていたカバンを持った俺を見て、気をつけてねと声をかけて看護婦は去った
『もうそんな時間…？』
Aもようやく布団から顔を出して、俺の方に顔を向けた
Aの手が何度か空を切る
｢また来る｣
俺はAの手を握り、安心させるようにそう告げた
『う、ん…待ってる…』
日が暮れるのと共に、Aは今までの寂しさを徐々に曝け出した
そんな声に、顔に、いたたまれなくなる
なんでAなんだ…
なんでAだけがこんな思いをしなくちゃならない
早く元気になってくれ
…なんて、こんな言葉は彼女の負担になってしまうか
俺は名残惜しくもAの手を離して病室を後にした
･
終わり
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作者名：時雨 | 作成日時：2021年3月12日 23時
