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「なんだお前は。見ない奴だな」
そういう貴方は聞かない声ですねと反射的に言いたくなった。
退屈を持て余し少し月が浮かんでいる真下の地上を歩いていたら急に誰かに声をかけられた。声からして男、で、この地に住まう人間ではないはずだ。私は普通の人間には認識を阻害できるようなおまじないというものをアシヤさんにかけてもらっているのだから。
その問いかけに私はすぐに答えられなかった。ぎぎぎと錆びた機械を動かす時のような音がしそうなほどぎこちなく声の聞こえた方向へ振り返る。そこには黒の中に毒々しく見える水色が映える服を身に纏い、顔面を半分ほどこれまた黒いマスクで覆っている白髪の男がいた。「…お前、」髪の毛とマスクで隠れていない男の瞳が私の姿をまっすぐ捕えた一瞬大きくなった。何だ、何に気づかれた。まさかだが、もしかしてこいつはアシヤさんが言っていた父上の配下の一人だったりするのか？そんな。もしかしてまだ私がこの世界に生きて存在していることが父上は知っていて、私を消すためにこの男を派遣してきたのか？いや、それはないか。私を知っているはずなら”見ない奴”なんて言わないはずだ。
「わ、たしは」
疑われているような、品定めされているような瞳に少し緊張しながら口を開くと目の前の黒いが私の言葉に被せるように口を開いた。「お前、サーヴァントか？」サーヴァント？あまり聞き覚えのない言葉に眉をひそめる。すると男は「は？」と不可解そうな顔で僕を睨みつけてきた。
「サーヴァントと言う言葉を知らない…？いや確かにあいつの反応は分類するなら人間ではなくサーヴァントのソレだ。しかしサーヴァントが自身のことすら知らないということがあり得るのか…？」
私に話しかけてきたのはそっちのくせに一人でぶつぶつと呟き始めた男を見て私は呆然とした。この場から立ち去ってもいいだろうか。そう思い片足を少しずつ後ろの方に下げさせていこうとしたら「おい」と声をかけられた。こっちを見ていないのに？宙を見ているのにこちらの動きに気づいたのか？やはりただものではない。神…か？いや、この地に神が父上以外に存在するのか？そう思考していると男は呆れたような顔を私に向けて「お前、あー、名前を教えろ。名前くらい言えるだろう」と言った。名前と言われても素直に言っていいものなのだろうか。言い迷っていると痺れを切らしたように男が口を開いた。
「…何だ、信用できないとでも言うのか。まあ経歴を明かさない医者なぞ信頼できんから当然か。…僕はアスクレピオス。医者だ」
続く
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影印 - Ayakaさん» コメントありがとうございます。自分の中では最近ギャグ寄りの話が多いけど大丈夫かな…と結構心配になっていたのでその言葉がとても嬉しいです。 (2021年6月26日 15時) (
レス) id: 2648135176 (このIDを非表示/違反報告)
Ayaka(プロフ) - 面白いです。続きも頑張ってください！楽しみにしてます。 (2021年6月22日 19時) (レス) id: f23d5c420b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：影印 | 作成日時：2021年5月22日 12時
