彼と彼女の出会い ページ34
「そちらは聖杯保管庫ですよ」
そうAが声をかけるとその人物はゆっくり振り返った。派手な髪色、その髪色に合わせたであろう服、そして高いヒール。「…わかってるっつーの」雑に答えたその人物は最近カルデアにやってきたアーチャーのサーヴァント、妖精騎士トリスタン…又の名をバーヴァンシーであった。どうやらマスターたちの知っている円卓の騎士であるトリスタンとは違う存在のようで扱いに少し困っているようだ。
そんな彼女は少し歩いた後に足を止めて辺りを見回していた。…もしかして迷子か？彼女の様子を見てAはそう思った。
こっち。Aはそう言ってバーヴァンシーの手を握る。「っはぁ？いきなりなんなのお前！」驚いたような声を発するバーヴァンシー。いきなりの行動、しかも初対面に近い男から手を握られるとは思わなかったのだろう。少々口が悪いことに驚きはしたがそれで動じるAではない。後ろで文句を言いたげな顔をしている彼女にAは振り返って目を合わせて言う。「共有ルームまで連れていく。ついて来て」そうしたら彼女は先ほどまで開いていた口を閉じて彼の後を黙ってついて行った。
＿＿＿＿
「…意味分かんねえこの施設。迷路にも程があるだろ」
辺りを見ても白白白。白い壁と廊下がこうも続くと頭がおかしくなりそうだとバーヴァンシーは思った。
お母様もここに来たら最初は迷うのかしら。ここにいない母を思い出し少し寂しい感覚を覚える。
「分かります。私も初めのころは迷いましたよ」
そう言うAは来た当初を思い出して苦い気持ちになっていた。よく迷っては花の魔術師に見つけてもらっていたな…。そんなことを思い出しながら歩みを進めていくとざわざわとした声が聞こえてきた。共有ルームが近い。
「着きますよ」そう声をかけるとバーヴァンシーはやっと…？と言った顔をした。聖杯保管庫からここまでが遠かっただけなのだが…よくあそこまで行ったものだなとAは思った。
「では私はこれで、次会った時はその…お母様？の話でも聞かせてくださいね」
「えと、ありが……はぁ？！おま、聞いて…？！」
「声に出てましたよ、お母様って」
「っ、知らなくていいの！お前は！」
徐々に小さくなるAに向けてバーヴァンシーはそう叫んだ。振り返らずにひらひらと手を振るその姿が妙に様になっていて、何故だか妙にイラついた。
知らなくていいのだ。
繋いでいる手を相手に気づかれないように弱々しく握り返したことも、去っていく背中を見えなくなるまで見つめていたことも、彼は知らなくていいのだ。
■■■■■5→←クリア前に妖精王が召喚されるカルデアだってあります
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影印 - Ayakaさん» コメントありがとうございます。自分の中では最近ギャグ寄りの話が多いけど大丈夫かな…と結構心配になっていたのでその言葉がとても嬉しいです。 (2021年6月26日 15時) (
レス) id: 2648135176 (このIDを非表示/違反報告)
Ayaka(プロフ) - 面白いです。続きも頑張ってください！楽しみにしてます。 (2021年6月22日 19時) (レス) id: f23d5c420b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：影印 | 作成日時：2021年5月22日 12時
