医神 ページ1
「ふざけるな。」
消毒液をたっぷり染み込ませた消毒綿を傷口にやんわりと押し付けるアスクレピオス。「いっ」「普通に痛いぞ？お前がもっと早くくれば少し程度で済んだがな。」消毒液が染みて起きる痛みにAは顔を歪めるがアスクレピオスはお構い無しに処置を続けている。しかも半笑いで。これは、怒っている。戦闘で傷を負った後すぐに来なかったことを、怒っている。
「右肩の深い切り傷。……ざっくりいってるな。怪我をした後すぐに来れば僕もここまでは怒らん。」
ため息を吐きながら器具を置くアスクレピオス。「だがな？」まだ彼の怒りはおさまらないようだ。鋭い眼力で睨まれる。思わず目を反らしたくなるが反らしたらまた機嫌を損ねることになるので耐える。
「お前は親と同じで神性持ちとしては大人しい部類かと思っていたがまさかとんだじゃじゃ馬か？いや、じゃじゃ馬は男に失礼か。ガキか？何歳だお前は。兎に角怪我をしたらすぐに来い。」
「16歳です…。」
「………ガキじゃないか。」
年齢を答えたらアスクレピオスはポケットの中を漁って棒付きキャンディを差し出してきたがAは丁重にお断りした。
失敬な、そこまで子供ではない。「僕にとっては子供同然の年齢の認識だが？」そんな仕方ないみたいな顔を…いや苺味が嫌だから葡萄だとかそういうわけではないですアスクレピオスさん。普通に、いらない。ただそれだけだから納得してほしい。不可欠な顔をしないでほしい。本当に。
「豊穣と生命…。」粗方処置が終わったのか包帯の用意をしながらアスクレピオスは呟く。勿論あのキャンディはアスクレピオスのポケットの中だ。「お前の神性が司っているものはそれだろう。どうせ月神、相場は決まっている。」
いいか？とアスクレピオスは指をAの眼前に突きつける。「普通なら今処置した傷はいくらサーヴァントとはいえ、もう少し時間をかけるものだ。」骨までいってもおかしくはない深さのはずなんだと言いながら頭をがしがし掻くアスクレピオス。苛ついているのか、珍しいと嬉しがっているのか。それとも困っているのか。どれにしても普通ではないことに変わりはない。
「お前の霊基はおかしい。」
アスクレピオスはカルテを見ながらさらりと呟いた。Aには嫌にその言葉が響いて聞こえた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 75人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
影印 - Ayakaさん» コメントありがとうございます。自分の中では最近ギャグ寄りの話が多いけど大丈夫かな…と結構心配になっていたのでその言葉がとても嬉しいです。 (2021年6月26日 15時) (
レス) id: 2648135176 (このIDを非表示/違反報告)
Ayaka(プロフ) - 面白いです。続きも頑張ってください！楽しみにしてます。 (2021年6月22日 19時) (レス) id: f23d5c420b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：影印 | 作成日時：2021年5月22日 12時
