短編集。(JUMP×JUMP)

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ホテルのスイートを出たら、エレベーターの前、見覚えのある男が壁にもたれて立ってい
た。



ｰｰｰｰ連絡したの、ついさっきなのに。



足を止めたら、男が顔を上げた。

嫌味なほど似合うサングラスを外して、にや、と笑ったのは、山田だった。



「ｰｰｰｰだいちゃん」


ｰｰｰｰえ。


声をかけられるとしたら、途轍もなく低い声だと思っていたから、どこか楽しそうなその声色に驚いてしまう。



「どうだった？伊野尾ちゃんは。

えろかったでしょ」


「…………は？」


……なに、言ってんの、こいつ。

お前、俺に恋人寝取られたんだぞ……。



怒りが湧いてくるのに、返すべき言葉が見つからない。

それなのに、山田は俺から目を逸らしてくれない。



「……やっぱさぁ、俺と大ちゃんって似てるよな｣

「……どういう、意味｣

「さあ？ ……わかんねぇならいいよ」



山田はわざとらしく俺の肩を叩いて、俺の横を通り過ぎていく。




……彼をここに呼んだのは俺だ。

行為のあと、なにもかも虚しくなって、彼に電話した。

いのちゃんのことは任せるって、すべてを暴露して。


それなのに、こいつは早く到着したばかりかちっとも動揺していない。




……あぁ、そうか。

こいつ、ぜんぶわかってたんだ。


隠し撮りしてたのが俺だってことも、今夜、俺がいのちゃんをここに連れ込んだことも。


わかっていて、こいつは止めなかったんだｰｰｰｰ。




「……じゃ、これからも応援してっからさ」


力なく振り向いた俺に、部屋の前に立った山田がよくわからないことを言う。



そのまま、ひらひら、と片手を振って、山田は扉の向こうに消えていった。




力が抜けて、俺は壁に背中をつける。

悔しくて、悔しくて、そのまま拳を壁に叩きつけた。



「……勝てねぇ……っ……」



はっきり、それがわかってしまった。

いのちゃんを無理やり自分のものにしてみても、虚しいだけだった。




……こんなこと、しなければよかった。



強かに打ち付けた拳がひりひりとした痛みを訴える。




それでも、こんな、……こんな傷よりも。

いまはずっと、胸の奥の方が痛かった。



ﾟ･*:.｡.＊.:*･ﾟ.:*･ﾟ＊


大変長らくお待たせしました……！

chau0223さんの『楽屋でやまいのがヤッてるのを見た○○くんが伊野尾くんを脅す話』です……！

(おまけ)お互いに片想いをこじらせすぎた山田くんと伊野尾くんの話。(ymin、arin）1→←6

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